まだまだ男女の賃金格差が大きいイギリス──でも女性たちは嘆いているだけではない
イギリスでも女性は賃金が低い職種につきがちでパートタイムで働く人も多いようだ B&M Noskowski-iStock
<昨年度のイギリスの統計では8割もの企業や組織において男女の賃金格差が歴然としていた。だががんばれば道は開けると奮起する若い女性も少なくない>
イギリスでは2年前から、社員数250名以上の企業すべてと病院や大学、軍隊、自治体、慈善事業といった公的機関に対し、男女の賃金格差 (=ジェンダー・ペイ・ギャップ) について情報を開示することが義務づけられている。政府が作った専用のウェブポータルでは会社名をタイプすると格差率やボーナス事情がわかるほか、自社のウェブサイトでもそのデータを責任者の名前つきで公表しなくてはいけない。毎年の締め切りはイギリスの経済年度末である4月4日、公共部門では3月末だ。
しかし、締め切りが1週間に迫った時点でも、対象となる1万あまりの企業や民間組織のうち3分の1ほどしか開示が済んでいなかった。開示を忘れたり拒否した企業には罰金が科される可能性もあるのだが...。初年度だった昨年は計1万550件の企業や組織が報告。締め切りぎりぎりか、督促状が来てからやっと回答した組織も多く、答えなかったのは当初の見込みを下回る約1500件だった。
統計の結果では、回答した8割の企業や組織において男女格差が歴然としていた。業界別平均で見ると、銀行などの金融関連業種が25%もの差でワースト1、教育部門がその少し後に入っている。企業別でみるとその数字はLLCを筆頭とするエアラインがなんと50%に迫る。これは、飛行機のパイロットがほとんど男性であることが原因らしい。LLCのひとつイージージェットはこの2年の間に女性パイロットの数を7割アップと大幅に増やしたのだが、まだまだ少数派だ。
まずは女性たちが勇気を出すこと
どこでどのように格差が生じているのかを見ていくと、日本でもおなじみの姿が浮かび上がってくる。女性はもともと賃金が低い職種につき、パートタイムで働いている人が多く、上級管理職や役員などの収入が高い立場ではその姿が少ないのだ。
とは言え、イギリスで役職についている女性の数自体は日本よりもずっと多い。なにしろ国王は女性だし、テリーザ・メイは歴代二人目の女性首相だ。トップで活躍する同性たちの姿を見て、がんばれば道は開けると奮起する若い女性も少なくない。人事や昇給が取りざたされる時期になると毎年、どうやって昇進を狙うか? うまく昇給を交渉するための秘訣は? といった記事が「エル」や「コスモポリタン」などの女性誌に必ず登場する。上手に自己主張ができるのはよい事だ、とみなされるイギリスでも、やはり女性には対立や交渉を嫌う傾向があり、みな悩むのだ。
平等な雇用実現について研究するマリリン・デヴィッドソン教授は、ガーディアン紙のインタビューで「多くの女性は自分に自信がない。自らの価値を低く見ているので、低すぎる賃金を提示されても受け入れてしまうし、昇給の話などしたらクビになると考えている」と語っている。
だから「まずは勇気を出して!」というのは女性誌の記事に共通したテーマ。次は、自分の仕事に見合う賃金の相場を洗い出し、交渉のシナリオを組み立てて練習し、絶好のタイミングを狙うこと。人気雑誌に掲載されるこのようなガイダンスは、キャリア志向者だけでなく普通の女性も思い切って声をあげようという気を起こさせるきっかけになっている。