最新記事

男女格差

まだまだ男女の賃金格差が大きいイギリス──でも女性たちは嘆いているだけではない

2019年04月03日(水)17時50分
冨久岡ナヲ(イギリス在住ジャーナリスト)

ちなみにイギリスのトップクラスのキャリアウーマンたちの収入は驚くほど高い。特に金融業界には年棒1億円以上、プラス実績ボーナス数億円という女性が複数いる。キャリアと家庭を持つことの両立はどの国でも働きたい女性が直面する深刻な問題だが、イギリスのこうした高給取り女性たちはなぜかすんなりと結婚し、中には実にたくさんの子供をもうけている人もいる。

たとえば投資界のスーパーウーマンと呼ばれたニコラ・ホーリックは6人、保険会社リーガル・ジェネラルの管理職ヘレナ・モリッシーはなんと9人の子持ち。実際のところ、彼女たちは高い収入のおかげで家事と子育ての助っ人を雇うことができて乗り切っているのだが、だからといって育児をすべて人任せにしているわけでは決してない。自分の成功は親にかけてもらった愛情のおかげ、というモリッシーは、キャリアと子育ての両立を果たしてきた道のりを本に書き、女性に生まれてよかった! と言える時代は来ている、とポジティブなメッセージを送っている。

自分で理想の会社を作ってしまう女性起業家

反面、女性の能力が男性と平等に評価されない職場もまだまだ多い。そんな環境でがまんを続けるくらいなら、自分で理想の会社を作ってしまおうという女性起業家は増えている

チャイルドケアのビジネスを立ち上げ、クラウドファンディングでまたたく間に9000万円の事業資金を集めたレイチェル・カレルもその一人。産休が終わったとたんに給料の半分以上が託児サービスに消えていくのを経験し、悩んだ挙句に起業した一人だ。今ではローコストなチャイルドケアを提供できるだけでなく、直接ケアラーを予約できるシステムで働き手も高い報酬が得られるウィンウィンのシステムを作り上げている。育児コストにめげてキャリアを諦める女性の数を減らすことに貢献している、という誇りもあるそうだ。

こうして、まだまだ男女の賃金格差はあるものの、イギリスの働く女性たちはただそのことを嘆くだけには終わっていない。今年の賃金格差開示の締め切りは過ぎたばかり。まだ全体は見えないが、現時点の統計では、差はほんの少しだけ昨年より縮んでいるという。

開示義務づけの一番の効果は、どの企業や組織が女性の労働力を評価しているか、格差をなくそうと努力しているかが世間からよく見えるようになり、会社の評判にも影響するようになったことだろう。女性たちのポジティブさと政府の取り組みで、性別に関係なく誰もが活躍できる社会へとほんの少しずつだが着実に向かっているように見えるイギリスだ。

【参考記事】ベルリン:男女の賃金格差は21%、だから女性の運賃を21%割引に

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    「男性に守られるだけのヒロイン像」は絶滅?...韓ド…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 4

    韓国のキム・ジヨンに共感する、日本の佐藤裕子たち..…

  • 5

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 1

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 2

    タンポンに有害物質が含まれている...鉛やヒ素を研究…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    「ショート丈」流行ファッションが腰痛の原因に...医…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ヨルダン皇太子一家の「グリーティングカード流出」…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 4

    キャサリン妃の「結婚前からの大変身」が話題に...「…

  • 5

    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプ新政権ガイド

特集:トランプ新政権ガイド

2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?