北欧式マタニティボックスを英国が導入検討──ただし強い反対意見も
いいことづくめに見えるが… MmeEmil-iStock
<赤ちゃんの親に無料で配布するマタニティボックスを英国が導入の動き。慈善団体が反対する理由とは?>
フィンランドでは、新生児が生まれると政府が赤ちゃんの親にマタニティボックス(育児パッケージと呼ばれている)を無料でプレゼントする。英国でもこれを導入しようという動きがあるのだが、ある慈善事業団体が、反対の意向を示した。いいことづくめに見えるこのマタニティボックスに、なぜ反対なのだろうか?
フィンランドでは幼児死亡率が激減
フィンランドのマタニティボックスには、ベビー服や寝具、おむつ、おもちゃのほか、外出時につけられる防寒用ブーツや手袋まで入っており、箱はベビーベッドとして使用できる。同国の社会保険庁事務所(KELA)によると、マタニティボックスに入れるグッズはフィードバックをもとに毎年変わっており、2018年度版は合計64種類のベビーグッズが詰められている。
フィンランドがマタニティボックスの配布を始めたのは1938年。当時は貧困層だけを対象にしていたが、1949年以降はすべての新生児がもらえるようになった(妊婦健診の受診などの条件あり)。もともとは出生率が低かったことと幼児死亡率が高かったことがきっかけだ。この育児補助制度は、マタニティボックスか現金(170ユーロ、約2万1800円)か好きな方を選べるようになっているが、KELAによると支給件数合計が毎年6万件ほどある中で、ボックスを選ぶ人は4万件に上るという。
80年にわたるこうした育児補助制度は、確実に効果を発揮しているようだ。米国の通信社UPI(2013年6月4日付の記事)によると、フィンランドの新生児死亡件数は、1930年代は1000人中65人だったが、現在は1000人中3.4人に減っている。米国の半数程度だという。
英国では一部で導入、全国へ拡大の動きも
こうした背景もあり、英国の王立助産師協会(RCM)によるとスコットランドでも近年マタニティボックスを取り入れており、イングランドでは一部で試験的に配布されるようになった。RCMは8月2日、この制度を英国全土に拡大し、新生児全員がもらえるようにすべきだと提言する声明を発表した。
というのも、RCMによると乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを高める要因を調査したところ、マタニティボックスを使うことでSIDSを減らせる可能性があることがわかったのだ。
リスクの中には、仰向けではなくうつ伏せで寝かされること、ドラッグや酒などで酔った親と同じベッドで寝ること、ソファのように柔らかくて安全ではない場所に寝かされること、などが含まれる。