銃所持を支持する新リベラル派
だが、CACの望みは憲法修正第2条だけではなく、権利章典を丸ごと基本的権利に加えることだ。
そうなればリベラル派は憲法修正第14条の「特権と免除権」条項に基づき、州法の合憲性に対する異議を連邦裁判所に申し立てられる。福祉から同性婚まで、個人である市民の「特権または免除権」を奪うあらゆる州政府の措置を訴えられるようになるのだ。
それと同時に銃規制が緩和されることになったとしても、市民権の保護強化はそれに見合う価値があると、CACは考えている。
一方、伝統的なリベラル派の法学者は今も銃所持の権利に強く反対する姿勢を崩していない。08年、保守派判事が多数を占める連邦最高裁が首都ワシントンの拳銃所持禁止条例に違憲の判断を下したときも、4人のリベラル派判事は反対を貫いた。
憲法制定者が意図していたのは州の民兵の保護であり、現代に当てはめれば州兵は武器を保有できるが、州兵の予備役や、ましてや一般市民には拳銃を保有する権利はない──4人はそう主張して、保守派の憲法判断を批判した。
保守派の法律家の大半も、CACの新しい憲法解釈を支持していない。個人に武装の権利があるという結論は保守派も共通だが、身体の自己決定権については憲法の文言に明示されていないだけでなく、暗にほのめかされてもいないという立場だ。
中間選挙が怖い民主党
保守派のアントニン・スカリア最高裁判事をはじめとする「原意主義派」は、憲法制定者の当初の意図を理解することを最も重視する。従来のリベラル派の憲法解釈については、憲法の中に都合のいい論拠を見つけ、自分たちの望む結論を導き出そうとするやり方だとして繰り返し批判している。
銃の所持を支持するCACの主張は、今はまだ奇抜な論議の域を出ていない。大半の研究者は左派も右派も、この件とは距離を置こうとしている。政治家もこの主張に飛び付く気配はない。
地方の有権者の支持を何とかして取り戻したいと考えている民主党穏健派の議員なら、この主張を受け入れそうな気もする。だが、彼らはこのリベラル派の新説が出回る以前から、既に銃所持への反対姿勢を弱め始めていた。
銃規制派にとっては残念なことに、バラク・オバマ大統領は「憲法修正第2条を支持・尊重する」と表明している。連邦議会の民主党指導部は攻撃用武器(殺傷力の高い自動小銃など)の禁止に本気で取り組むと約束したが、銃規制を優先課題とは考えていない。
民主党は厳しい戦いが予想される11月の中間選挙に向けて、「あらゆる武器」を身に付けておきたいのだろう。
[2010年3月17日号掲載]