CIAがひた隠す秘密暗殺部隊
「殺しのライセンス」には疑問なし
だが9・11テロを機に、CIAの「暗殺」権限をめぐる曖昧な解釈は消えた。01年9月25日、ブッシュ大統領は「アルカイダの息の根を止めるため」、米国史上最も幅広い情報作戦を承認。政府当局者と情報機関は暗殺のターゲットとなるテロリストのリストを作成した。
ある2人の情報筋によれば、アルカイダ幹部の暗殺計画を猛烈に非難している民主党議員らも計画が違法だと主張しているわけではない。だが、たとえ計画が合法とされていたとしても、暗殺部隊がCIA内部で厄介な存在と見られていた理由は用意に想像できる。
第1に、存在自体が明らかになる危険性があった。さらに第2に、ターゲットを誤認したり巻き添え被害を生む危険性もあった。モサドの暗殺部隊は、ノルウェーでパレスチナ人テロリストと間違って無実のモロッコ人ウエーターを殺している。
多くの議員がCIAに憤慨しているのは、計画の合法性や合理性が原因ではない。原因は、議会に秘密にされてきたという事実だ。現職および過去の米情報当局者は、CIAが報告さえしていれば議会はテロ組織幹部を暗殺する努力を支持していた可能性が高いと主張する。実際ブッシュ政権もオバマ政権も議会の情報委員会も、無人機を使ってアフガニスタンとパキスタンでテロ容疑者を追跡・殺害する国防総省とCIAの作戦を強く支持してきた。
それでも秘密を死守するCIA
現在の論争を引き起こしてしまった張本人はパネッタ長官だ。パネッタは6月24日、上下両院の情報委員会に「緊急の状況説明」を行い、自分は最近になってこの計画を知り、中止を命じたと説明した。また関係者によればパネッタは、チェイニーがこの計画を議会に知らせないようCIAに命じたことを、その時に明かしたという。
パネッタは今、元情報当局者や議会のCIA支持者から手際の悪さを非難されている。彼はチェイニーの役割を誇張することでCIA批判派に格好のネタを与えるとともに、ブッシュ時代の過ち(テロ容疑者に対する行き過ぎた尋問手法など)で、すでに集中砲火を浴びているCIAにさらにダメージを与えたというのだ。
非難の嵐にもかかわらず、計画の詳細は依然としてほとんど明らかになっていない。それは、そうなるようにCIAが最善を尽くしているからだ。ポール・ジミグリアーノ広報官の言葉からも、その努力は伺える。「CIAは計画内容についてコメントしない。計画は現在も重要機密事項だ」