超加工食品 脳の快感回路に作用する危険性を、欧米科学者が警告
KILLED BY FAKE FOOD
「特にここ5年ほど、超加工食品の取りすぎは肥満、糖尿病、心臓病、鬱病、癌、腎臓・肝臓疾患のリスクを高めることを示す論文が非常に増えている」と、ニューヨーク大学のマリオン・ネスル名誉教授(栄養学・食品研究・公衆衛生)は言う。
「食品ではなく、化学製品」
食品加工の歴史は、人類が火を発見し動物の肉を焼いて食べるようになった遠い過去にさかのぼる。
古代メソポタミアとエジプトでは燻製、塩漬け、乾燥といった方法で食物が保存されていた。19世紀に低温殺菌と缶詰の製法が開発され、食物を長期保存し輸送する能力は飛躍的に高まった。
私たちがいま知っているような加工食品が誕生したのは20世紀前半。ジャガイモのでんぷんをつなぎにして、豚肉、ハム、砂糖、水、亜硝酸ナトリウムで柔らかい塊を作り、四角い缶に詰めた「スパム」が開発されたときだ。
以後、アメリカの中間層の拡大に伴い、手軽で長持ちする食品の需要が急増。食品業界はその利益で研究開発を進め、噴霧乾燥や凍結乾燥などの処理技術を編み出した。
ついには2年間保存可能なまずまずおいしいカップケーキが製品化され、2000年代初めにはアメリカ人の摂取カロリーの半分以上を加工食品が占めるに至った。
栄養学者がこの流行を表す用語を発明したのは2009年。この年、サンパウロ大学(ブラジル)のカルロス・モンテイロ教授が「NOVA食品分類システム」を発表した。これは栄養素ではなく、物理的・生物学的・化学的加工処理の程度と目的によって食品を分ける新しい分類法だった。
モンテイロは「超加工」という用語を発案し、次のように定義した。
「食品から抽出した物質(油脂、糖、でんぷん、タンパク質)、食品成分由来の物質(硬化油、加工でんぷん)、有機物の原材料を化学的に合成した物質(化学調味料、着色料、食品添加物など)によって、全体または大半が作られた工業化学製品」
要するに、超加工食品とは自然界に存在する食品から糖、塩、脂肪、でんぷんを抽出し、人工着色料、香料、安定剤などを混ぜ合わせたフランケンシュタイン的人工物だ。
ソフトドリンク、ホットドッグ、パッケージ製品のクッキー、塩味のスナック、冷凍食品、缶詰などが、このカテゴリーに入る。
「こういうものは食品ではない」と、モンテイロは言う。「化学製品だ。食品に属さない、属すべきでない化合物を含んでいる」