超加工食品 脳の快感回路に作用する危険性を、欧米科学者が警告
KILLED BY FAKE FOOD
多くの研究者は、範囲が広すぎるとしてモンテイロの分類法に反対している。
実際、「超加工食品」のカテゴリーには実にさまざまな栄養価の多種多様な製品が含まれる。カップケーキやコーンチップ、ダイエットソーダと、本物の鶏の胸肉にブドウ糖、砂糖、イエローコーン粉などを加えたものや、本物の牛肉と豆、つぶしたトマトに大豆粉、着色料を加えた製品など、タンパク質を多く含む食品が一緒くたに同居している。
しかし、モンテイロが食品の加工レベルを示す新しいカテゴリーを定義したことで、公衆衛生や疫学の専門家は食品加工のメカニズムや健康問題との関連を議論するための枠組みを手に入れた。
超加工食品がどのように肥満を招くのか、何千もの化学物質や添加物、栄養素のどれが健康を悪化させるのか、科学者たちはまだ解明できていない。
だが、食品メーカーを動かした市場の力は明らかだ。
肥満と代謝性疾患が急増し始めた1980~2000年、平均的なアメリカ人が摂取可能なカロリー量は1日約3200キロカロリーから4000キロカロリーに増加。その結果、消費者の関心と胃袋をめぐる業者間の競争が一気に激化した。
「至福ポイント」を徹底活用
一方、80年代には「もの言う株主」が食品会社への圧力を強め、株価を上げるため四半期ごとの収益を伸ばすよう要求した。
こうして食品業界では、製品開発とマーケティングの「軍拡競争」が繰り広げられた。
「食品を売って利益を得たいなら、消費者に他社ではなく自社の製品を買わせるか、消費者全体の食べる量を増やすしかない」と、ニューヨーク大学のネスルは指摘する。
自社製品をもっと売るために、食品会社は書店や衣料品店、ドラッグストア、ガソリンスタンドにも商品を置いた。シリアルを多く売るために1粒のサイズを大きくし、より多くの漫画キャラクターを登場させた。
企業に雇われた多数の科学者は、もっと多くの食品を売るための独創的なマーケティング手法と科学的イノベーションを考案した。
ジャーナリストのマイケル・モスは、2013年に出版した『フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠』(邦訳・日経BP社)の1章を割いて、ハワード・モスコウィッツを紹介している。
消費者が最も強い欲求を感じるように食品を「最適化」するために、高等数学とコンピューター科学を駆使して先駆的研究を行った食品業界のスターだ。