超加工食品 脳の快感回路に作用する危険性を、欧米科学者が警告

KILLED BY FAKE FOOD

2022年1月31日(月)11時05分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

220201P18_KKS_05.jpg

『フードトラップ』の著者マイケル・モス OLIVER MORRIS/GETTY IMAGES

モスコウィッツは長年、朝食用シリアルからスパゲティのソースまで、さまざまな製品の改良を手掛けてきた。

色、香り、パッケージ、味、食感の改変を「人間のモルモット」でテストし、得られたデータを高度な数理モデルに反映させて、「成分とその成分が生み出す知覚の関係を調べ上げた」という。

その結果、大手食品メーカーの最も重要な武器は糖分であることが分かった。消費者の摂取量を最大化させる「完璧な量」の甘さを、モスコウィッツは「至福ポイント」という造語で表現している。

食品会社は至福ポイントを徹底活用することでアメリカ人の味覚を変え、ポテトチップスやアイスクリームを過剰摂取し、ブロッコリーやアスパラガスを敬遠するように誘導したと、モスは主張する。

最近の研究では、スーパーに並ぶ食品の66%に甘味料が加えられているという。

「企業は消費者を食品に引き付ける本能的衝動を発見し、そこに付け込む手法を学んだ」と、モスは言う。

「問題は、これらの企業がソーダやクッキーやアイスクリームなどに完璧な量の甘さを持たせたことではない。パンやヨーグルトやスパゲティソースなど、昔は甘くなかった食べ物に糖を加えたことだ。その結果、何でもかんでも甘くすればいいという風潮が生まれた」

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の小児内分泌学者ロバート・ラスティグによれば、最もよく使われる甘味料の1つである果糖は、今や多くの食品に自然界では考えられない濃度で含まれている。

近年の研究によれば、果糖はミトコンドリアの健全な働きに欠かせない重要な酵素を破壊したり不活性化したりすることが分かっている。

ミトコンドリアは細胞内の発電所のような存在で、単糖類を燃やして人間が身体や脳を機能させるのに使うエネルギーであるATP(アデノシン3リン酸)に変換する。

このエネルギー変換に支障が出ると、処理されないブドウ糖が増え、血液中を循環する。過剰なブドウ糖を感知した膵臓はインスリンを分泌し、ブドウ糖を血流から除去して脂肪として蓄えるように指示する。

この脂肪の一部は肝臓に蓄積される。肝臓は胃から出た血液をろ過し、加工し、バランスを取る器官だ。

ここが正常に機能しないと、問題が発生する。通常ならミトコンドリアが供給するはずのエネルギーを奪われた私たちは、さらなる過食に走る。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中