超加工食品 脳の快感回路に作用する危険性を、欧米科学者が警告
KILLED BY FAKE FOOD
問題は、従来のようにただ長持ちさせるためだけでなく、風味や見栄えの良さや食感などを追求して加工を施した多種多様な食品が爆発的に増えていること。こうした食品は、それを構成する化学物質のレベルまでいったん分解して、化学物質に手を加えてから、再び合成するという工程を経ている。
自然界には存在しない、いわばフランケンシュタインのような食品だ。従来の意味での加工とは処理のレベルが違うため、栄養科学は新しい呼び方を考え出した。「超加工食品」である。
多くの超加工食品は私たちの脳の「弱み」に付け込むように作られている。具体的には、快感を処理する回路に働き掛けるのだ。
麻薬やニコチンのように、多くの人がこうした食品に病みつきになるのはそのためだと、一部の専門家はみている。
アメリカ人がポテトチップスなどの加工食品を日常的に食べ始めたのは80年代からだが、これほどバラエティーに富んだ加工食品があふれるようになったのは、ここ数年のことだ。
ある調査によると、平均的なアメリカ人の摂取カロリーに占める加工食品の割合は2001~2002年には54%だったが、2017~2018年には57%と、じわじわ増えている。
「砂糖と脂肪を抽出、精製、加工して、濃度や純度を高める技術は非常に進歩していて、製造コストも下がっている」と、食物依存症を研究するミシガン大学の心理学者アシュレー・ギアハートは言う。
「(食品メーカーは)それらの成分を入れて、今まで私たちの脳が進化の過程で味わったものより、はるかに強烈な快感をもたらす食品を作っている」
こうした食品が人々の健康に与える影響は見過ごせない。
今ではアメリカの成人の半数が糖尿病か糖尿病予備群だ。成人の4人に3人は太りすぎで、成人の42%に当たる約1億人は米疾病対策センター(CDC)の基準で肥満に分類される。2~5歳の子供の10人に1人は既に肥満になっており、10代ではそれが5人に1人の割合になる。
新型コロナウイルス感染症では、肥満のアメリカ人は他のリスク要因がなくても入院率が3倍に上ったと推定されている。心臓病など食生活と関連する他の基礎疾患があれば、肥満の人の入院率は6倍、死亡率は12倍にも上る。
つまり、私たちの食べている物が私たちを死に追いやっているのだ。
いま必要なのは加工食品が健康に及ぼす影響を精査し、国家的な健康危機を招いた大手食品メーカーのマーケティング手法を人々に知らせること。
今はまだ食品業界の強力なロビー活動に対抗し得る勢力は米議会には育っていない。それでも何らかの規制を求める声は高まりつつある。