新型コロナの経口治療薬開発レース、シオノギら後発組も逆転狙う
実際、抗ウイルス薬の開発は難しい。なぜなら既に人体の細胞内で複製されたウイルスを対象に、健康な細胞に痛手を与えずに攻撃しなければならないからだ。最も効果を発揮するには、早期投与が不可欠という条件もある。
現在は入院を必要としない新型コロナウイルス感染者向けに承認されている治療法は、点滴や注射による抗体薬の投与に限られている。
ジェフリーズが最近試算したところでは、有効で便利な新型コロナウイルスの治療手段が登場すれば、年間売上高は100億ドルを超える可能性がある。メルクは米政府との間で、モルヌピラビルによる治療料金を1回700ドルにする形の契約を結んでいる。
負担軽減を模索
これまで幾つかの種類の抗ウイルス薬が開発されている。例えば、当初はC型肝炎向けだったアテアの「ポリメラーゼ阻害剤」は、新型コロナウイルスの自己複製能力を破壊する。ファイザーの治験薬のような「プロテアーゼ阻害剤」は、ウイルス増殖初期段階で複製に必要な酵素との結びつきを防ぐ働きがある。
パーデスもプロテアーゼ阻害剤を開発中。ロパティンCEOは「ウイルスが複製工場を立ち上げる」過程を止めることを狙っていると説明した。
メルクのモルヌピラビルは、ウイルスのRNAにエラーを引き起こして増殖を防ぐ。
このモルヌピラビルとファイザーの治験薬は5日間、12時間ごとに服用しなければならない。また、ファイザーの治験薬は、エイズ感染症に使われる既存の抗ウイルス薬「リトナビル」の併用が必須。この「ブースター」によってプロテアーゼ阻害剤の効果が高まる半面、消化器系の副反応が生じ、他の薬の効き目を妨害する可能性がある。
スクーリー教授は「望ましい効果がある薬を摂取するために、いらない薬まで飲まなければならないような感じだ」と説明した。
これに対してエナンタは昨年、手持ちの抗ウイルス薬を総点検した後、新型コロナウイルスの従来株や変異株の複製に不可欠な酵素だけを標的とした新たなプロテアーゼ阻害剤を開発する道を選んだ。ルリーCEOは、リトナビルと併用せず、1日1回の服用という形で治験を行うと述べた。
パーデスのロパティンCEOも、同社の治験薬について服用を1日1回か2回にして、リトナビルの併用が必要かどうか評価していると明らかにした上で「ブースターを使わなければならないとは想定していない」と語った。
(Deena Beasley記者)
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