ファーウェイ制裁の不透明な真実、グーグルはNGだがマイクロソフトはOK?
不思議なのは、マイクロソフトのWindows。ファーウェイへのライセンスが認められているのだが、だとすればなぜグーグルのアンドロイドは認められないのだろう? パソコンはいいが、スマートフォンはダメ。ここに一貫したロジックはあるのだろうか。
ファーウェイ創業者娘の裁判もいまだ決着していない
そもそも論を言い出すと、ファーウェイ問題が最初に表面化した孟晩舟(モン・ワンジョウ)裁判も混迷を極めている。
ファーウェイの創業者である任正非(レン・ジェンフェイ)の娘にして、ファーウェイ最高財務責任者(CFO)の孟晩舟が、2018年12月に米国当局の要請に基づき、カナダで逮捕された事件である。以来2年半にわたり、米国への引き渡しをめぐる裁判が続いてきた。
孟の容疑はなんだったのか、もはや誰も覚えていないだろう。2011年、ファーウェイは関連企業のスカイコムを通じ、米ヒューレットパッカード製のサーバーなどの機器、そしてWindowsなどのソフトウエアをイランに輸出した。米国のイラン制裁に抵触することは明らかだが、話を面倒にしているのはここからだ。
というのは、孟を逮捕した容疑は制裁違反そのものではないためだ。ファーウェイと取引があったHSBC(香港上海銀行)について、スカイコムとファーウェイの関係、イランとの取引について隠蔽していたことが詐欺にあたるという容疑なのだ。
カナダで逮捕された孟の身柄を米国に引き渡すには、米国とカナダの双方で犯罪となる双方可罰性のルールを満たさなければならない。そこでHSBCを騙した詐欺罪でとなったわけだが、「HSBCは何も知らず、騙されていました」という筋書きはどこまで信じられるのか。
英BBCによると、今年6月末にHSBC従業員がスカイコムとファーウェイの関係を認識していたことを示すメールなどの新資料が提出された。となると、容疑自体が成り立たなくなるように思えるが、カナダの裁判所はこの新資料の証拠採用を拒否。さらによく分からない状況が続いている。
と、こんな形でファーウェイ問題は不思議な問題が多く、説明もかなりやっかいだ。制裁の詳細や孟晩舟裁判の展開についてはアバウトな記述でお茶を濁すことが多いのは、日本メディアのみならず海外メディアにも共通している。
この複雑かつ不透明な状況をどう理解するべきか。当局の動きを最大限に擁護するならば、「安全保障の最前線なのだから、理屈で説明できない話が飛び交うのは仕方がない」となるのだろうが、ビジネスにとって大きなマイナスであることは間違いない。