遺伝子組み換え「安全」と科学者、それでも不信感が消えない理由
Labeling GMO Foods
はっきりと表示されれば抵抗が減るという調査結果もあるが ANNECORDON-iStock.
<食品業界と市民団体の駆け引きが続き、遺伝子組み換え作物(GMO)の表示をめぐる攻防も。科学者は安全性を保証したが......>
バラク・オバマ前米大統領が激しい議論を呼んだ「遺伝子組み換え作物(GMO)表示法案」に署名したのは2016年7月。GMO表示が食品の売り上げに及ぼす影響に市場関係者は不安を隠せなかったが、最近の調査によると、表示義務付けにより遺伝子組み換え(GM)食品に対する消費者の信頼感は増したようだ。
この調査は米農務省の委嘱でバーモント大学の研究チームが実施したもので、表示義務付けによって消費者の不信感が約20%低下したという。情報開示により、GM食品へのネガティブなイメージが多少なりとも払拭されたのだろう。
研究チームはまず、全米の先陣を切って2016年7月に独自のGMO表示法を施行したバーモント州で、住民8000人近くに聞き取り調査を行った。すると、州法の施行前は、他州の住民に比べてGM食品への抵抗感が強かったが、州内の販売食品にGMO表示が義務付けられ、自分の判断で食品を選べるようになると抵抗感は減った。
その時点でまだ表示が義務付けられていなかったほかの州では、抵抗は強まる一方だった。バーモント州の州法は食品のパッケージにGM原材料に関する情報を明記するよう定めていたが、この州法が発効した直後に、オバマ政権はバーモント州法よりも緩い連邦法を成立させた。
連邦法では生産者・食品メーカーは3つの表示方法のいずれかを選択できる。GM原材料が含まれることをパッケージに明記するか、農務省が作成したGMOのシンボルマークを付けるか、スマートフォンで読み取れるバーコードを表示し、インターネット上で情報を提供するかだ。連邦法の成立に伴い、バーモント州法は効力を失ったが、一部の食品は州独自の表示を続けている。
好感度アップを狙っても
連邦法の成立を受けて農務省は表示の基準作りを進めたが、その際、意図的に「ジェネティカリー・モディファイド(遺伝子組み換え)」というよく知られた表現の代わりに、「バイオエンジニアード(生物工学技術による)」という文言を採用。その頭文字BEをあしらった消費者受けのするシンボルマークを提案している。
だが、これは「業界のためのプロパガンダ」だと、食品安全センターのジョージ・キンブレルは怒る。「急に呼び方を変えてBEという用語を使えば、消費者に誤解を与え混乱を招く」