古民家再生、古木で「世界を結ぶ」──山翠舎が切り拓く建材の新たな可能性
また、2024年1月に発生した能登半島地震で倒壊した古材の回収事業においては、株式会社坂茂建築設計とパートナーシップを組んで参画。回収した古材は現在、山翠舎の倉庫に保管されており、今後、都内の商業店舗などでの活用が予定されている。
大学との協力も進展している。京都工芸繊維大学と共同で古木の3Dスキャンシステムを開発中だ。これが実現すれば、古木の形状確認やデザイン検討が容易になり、需要の拡大が期待される。さらに、海外デザイナーとのプロダクト企画では、3Dデータを活用することで遠隔での綿密な打ち合わせが可能になり、商品やサービスの可能性が一層広がる。
古木の価値を世界に発信、海外のアーティストやデザイナーともコラボ
同社は創業時、木工を主体とする企業であった。そこから2代目が内装工事等に事業を広げ、古木を活用した事業を始めたのは3代目の現社長だ。
しかし当初は、古木の事業を推進すること自体が直接SDGsの達成に繋がるという理解が社内で不足していたという。さらに従業員数も20人程度と、限られたリソースでSDGsの取り組みを行う必要があった。
そのため毎週の社内勉強会に加え、多くの外部・自社メディアを駆使して、自社SDGsの取り組みを発信。それを継続することで、社内での認知度や取り組みが向上していった。外部のSDGsに取り組む先進企業や専門家とも連携して問題などの解決を図ることで、取り組みを円滑に実施することもできている。
こうして社内一丸となって取り組んできた結果、同社の古木を使った家具は、グッドデザイン賞2020「審査員の一品」や、ウッドデザイン賞2020「特別賞」などを獲得するなど、高い評価を得ている。
2024年には、公益財団法人日本生産性本部の経営品質協議会から、古木サーキュラーエコノミーの実現に向けた先進的な経営が評価され、第6回経営デザイン認証の「スタートアップ認証」を取得。また、古木や古材の所有者と活用希望者をマッチングさせる「古材マッチングシステム」で特許を取得し、古民家・古木分野での新たな市場開拓に挑戦している。
山翠舎の取り組みは国内に留まらず、世界へと広がりつつある。2024年4~9月には六本木ヒルズの森美術館で開催された世界的アーティスト、シアスター・ゲイツ氏の個展「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」において、古材を使用した大型什器の制作を担当し、古木のアップサイクルの重要性を示す成功事例となった。
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