アフリカの教育改革へ、SL Creations・ユニセフ基金に込めた創業の信念
SL Creationsの支援により、2023年5月に完成したアフリカ東部の島国マダガスカルのベヴィティカ中学校の新校舎
<株式会社SL Creationsは、食文化の一翼を担う企業として社会に貢献したいとの創業時からの強い思いで、1991年に「SL Creations・ユニセフ基金」を設立。基金を通じて、「すべての子どもが質の高い教育を受けられる社会」を目指し、アフリカでの教育支援活動を続けている>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
食品会社として水・食糧の提供を皮切りに子どもたちの教育支援へ
世界中で約6,700 万人----。これは、小学校に通うことのできない子どもの数だ。その多くは開発途上国に集中しており、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の調査によると、サハラ以南のアフリカでは、学齢期にある子どもの5人に1人が小学校に通えていない状況だという。
2000年以降、南アジアをはじめとする多くの地域では、急速な経済成長や支援団体などの尽力によって教育環境が改善し、就学率も上がってきた。しかし、サハラ以南のアフリカの教育問題については対策が遅れたまま。貧困や学校の不足、紛争、男女格差などが影響して、子どもたちが十分な教育が受けられない状況が続いている。
そうしたなか、アフリカの子どもたちのために、地道な教育支援活動を続けているのが株式会社SL Creationsだ。
同社は1970年の創業以来、安心・安全な食品にこだわり、全国13都道府県18地域で食品・食材の宅配サービス事業を展開する、フードデリバリー業界の老舗企業。販売員につけられた、「シュガーレディ」の愛称を聞いたことがある人も多いのではないだろうか。では、なぜ宅配サービスの企業がアフリカの教育支援を行うようになったのか。販売企画統括本部 販売企画部 広報室の秋山里実氏は、活動の背景をこう語る。
「日本では戦後、ユニセフを通じて世界中から粉ミルクや医療品などの支援を受けたことで、多くの子どもたちが救われました。そうした事実を受け、弊社では創業時から『食文化の一翼を担う企業として、社会に貢献したい』という思いを強く持っていたのです。現在は、食にとどまらない支援を行っていますが、当初の思いはずっと継承されています」
その言葉通り、同社は長年にわたって社会貢献活動に取り組んできた。1986年、ユニセフを通じてスーダンに井戸の掘削資金を寄付すると、91年には「SL Creations・ユニセフ基金」を創設。マラウイの子どもたちへの栄養改善プロジェクトや、ブータンにおける給水・衛生施設の設置プロジェクト、東日本大震災時の被災地支援など、基金を活用した数多くの支援活動を行ってきた。
「SL Creations・ユニセフ基金は、創業者や社員、販売員の思いが結実した取り組みであり、食糧難や病気にあえぐアフリカの子どもたちの支援をはじめ、さまざまなユニセフのプロジェクトに活用されています」(秋山氏)
2014年からは、アフリカの子どもたちを命の危険や人権侵害などのリスクから守るためには教育が必要との考えから、ユニセフによる教育支援プログラム「スクール・フォー・アフリカ」を通じてマダガスカルへの支援を開始した。
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