放置竹林から建材へ──竹が拓く新しい建築の可能性...日建ハウジングシステムの革新
竹を用いた大阪オフィスのインテリア
<強度と成長速度に優れた「竹」を建材として活用する研究を進める株式会社日建ハウジングシステム。放置竹林問題の解決と脱炭素社会の推進を目指したこのプロジェクトは、竹を次世代の建築資材として再評価する取り組みとして注目を集めている>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
日本人にとって身近な「竹」は、日用品や家具の材料として古くから利用されてきた。しかし、安価な輸入竹やプラスチックの普及により、国産竹の需要は減少。各地の竹林は放置されるようになり、この「放置竹林」問題が深刻化している。
竹林は地表の土をとどめる力が弱く、斜面では大規模な土砂崩れの原因となる。また、樹木と比べて成長が早いため、周辺の生態系に悪影響を及ぼす可能性も指摘されている。現在の日本では、衛星画像で確認できるほど放置竹林の面積が拡大している。
こうした課題を前に、竹を「持続可能な建材」として再評価し、建築構造材としての可能性を拓いているのが株式会社日建ハウジングシステムだ。
強度と持続可能性を両立した「竹集成材」
日建ハウジングシステムは、都市型集合住宅の企画・設計・監理および調査研究の専門家として、さまざまな集合住宅の設計を手掛けてきた。2016年には「住空間の未来」を研究・立案するためのlid(life innovative design)研究所を立ち上げた。
このlid研究所が推進するプロジェクトの一つであり、現在、国内外で注目を集めているのが「竹集成材構造プロジェクト」だ。
竹は、高い強度としなやかさ、弾力性を兼ね備えており、建材としてのポテンシャルが極めて高い。しかし、日本の法律では竹が建材として定義されていないため、そのままの形で使用することはできなかった。
そこでlid研究所は、鹿児島大学や株式会社ハフニアムアーキテクツと共同で竹集成材を建築構造材として活用するための開発に乗り出した。集成材とは、複数の板を貼り合わせて高い強度を持たせた建材である。
2年間にわたる試行錯誤の末、2023年、竹集成材構造プロジェクトは日本建築センターの性能評価書を取得。これにより、「竹が建築構造材として使用可能である」ことが正式に認められた。