「びっくりドンキー」と生物多様性...田んぼの生態系を支える「生きもの調査」とは
生産者による「田んぼの生きもの調査」の様子
<生物多様性の減少が深刻化する中、「びっくりドンキー」を展開する株式会社アレフは「田んぼの生きもの調査」を通じて、水田の生物多様性を保全し、持続可能な農業を推進している>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
生物多様性が世界中で急速に失われている。世界自然保護基金(WWF)によれば、過去50年間で、生物多様性は約73%減少した。特に淡水域では約85%もの減少が報告されている。
生物多様性は、地球上の生態系の基盤を成している。空気や水の浄化、食料や資源の供給、災害の抑制など、私たちは多くの恩恵を享受している。これらが失われると、私たちの生活環境や生命の維持が大きなリスクにさらされる。
生物多様性を守る「田んぼの生きもの調査」
この危機感を背景に、「びっくりドンキー」を展開する株式会社アレフは生物多様性保全のためのアクションを積極的に展開している。
アレフは1990年代から、安全・安心な食材調達に取り組んできた。現在では、契約する400以上の農家に対し、農薬の使用を「除草剤1回のみ」に制限すると同時に、「田んぼの生き物調査」を義務付けている。
水田は、メダカ、カエル、ドジョウ、ゲンゴロウ、タガメ、トンボ、タニシなど、さまざまな野生動物が集まる生態系の宝庫だ。「田んぼの生きもの調査」は、水田に生息する生物の種類と数を記録し、生物多様性の実態を「知る」ことを目的としている。知識を得ることで、次の行動が可能になるのだ。
自分たちの田んぼにどれだけの生き物がいるのかを詳しく知った農家の約8割が、生き物に優しい農法を実践するようになった。例えば、水鳥や水生昆虫のために冬でも水を保持する、トンボのヤゴが成長するまで田んぼの中干しを遅らせる、魚や亀が移動しやすいように水路にスロープなどの補助を設置するなど。
このような保全活動は、毎年開催されるアレフの生産者協議会で課題や成功事例を共有することにより、さらなる発展を続けている。2023年度には、契約農家の「田んぼの生き物調査」実施率が100%に達した。