最新記事
SDGsパートナー

「本当の森」を次世代へつなぐ住宅メーカーの挑戦、アイビックの「森のおくりもの」プロジェクトとは?

2024年10月25日(金)16時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
「森のおくりもの」プロジェクト

2024年4月、大分県国東市の山林で行われた植樹祭。小雨の降るあいにくの天気のなか、78人が参加

<「放置林」は生態系の崩壊や災害リスクの増加を招く。この問題に向き合うべく、株式会社アイビックは土地本来の植物を山林に植樹していくプロジェクトを始動させた。「本当の森」を次世代へつないでいくための取り組みとは>

世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇


国土の約7割を森林が占める日本。しかし、そのほとんどが「人の手が加わった森」であり、一度も伐採されていない原生林はごくわずかだ。

薪や炭用の木、肥料用の落ち葉などを採取してきた「里山」、神社を囲むように手入れされた「鎮守の森」、そして木材生産のためにスギやヒノキを植えた人工林。歴史上、日本人の暮らしは森林と密接に関係していた。

しかし近年、過疎化と林業の後継者不足により、管理されずに荒廃した「放置林」が増加している。そうした森林では地面にまで光が届かず、暗い森となり、生物多様性は失われ、土壌は痩せていく。豪雨の際に水を吸収しきれず、土砂災害が発生しやすくなっている。

多様な植樹で森の生態系を取り戻す

こうした現状に住宅メーカーとして危機感を持ったのが、大分県に本社を置く株式会社アイビックだ。身体にやさしく、安心・安全で快適な「素足(はだし)の住まい」を追求している同社は、地元の木材を積極的に活かしてきた。年間に使用する木材は約5000本にもなる。

そんなアイビックは2024年、植樹活動を通じて森を作り直すことを目指す、「森のおくりもの」プロジェクトをスタートした。放置林を、人と自然とが共存共栄するための里山と、人の管理を必要としない自然度の高い奥山へと整備していこうという取り組みだ。

4月に実施された第1回植樹祭には、大分県在住の顧客家族78人が参加し、20種類以上・500本の苗木が同県国東市の山林に植えられた。単一の苗を植えるのではなく、混植しているのは、自然に近い、健全な森に戻すためだ。

多種多様な植物を混植することで、地上だけでなく地下にも健全で強靭な根を巡らせる。これが森林の表層崩壊を防ぎ、水資源の確保や生物多様性の向上に寄与する。さらに、自然の複雑なつながりを体感してもらうことで次世代への環境教育にもなる。こうした「森のおくりもの」プロジェクトの包括的な考えは、林学博士の西野文貴氏が提唱する「里山ZERO BASE」の理念にもとづいている。

西野文貴氏

本取り組みのパートナーである株式会社グリーンエルム代表取締役にして林学博士の西野文貴氏

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米政府、中国系ハッカーによる大規模メタデータ窃取を

ワールド

原油先物が反発、5日のOPECプラス会合に注目

ワールド

ロシア、シリア指導部との連帯表明 「反体制派に外部

ワールド

ロシア富裕層の制裁回避ネットワークを壊滅、米英が連
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    韓国ユン大統領、突然の戒厳令発表 国会が解除要求…
  • 5
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 6
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 7
    肌を若く保つコツはありますか?...和田秀樹医師に聞…
  • 8
    混乱続く兵庫県知事選、結局SNSが「真実」を映したの…
  • 9
    ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」…
  • 10
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 4
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 5
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 6
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 10
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中