「誰もが安心して泊まれる」場所を目指して...医療的ケア児と家族の願いに応えるコスモスホテルマネジメント
アパートメントホテル「MIMARU」に試泊する宿泊客とホテルスタッフ
<障害のある人やケアが必要な子ども、その家族の旅行をサポートするアパートメントホテル「MIMARU」。社会的なバリアを乗り越え、開かれた社会へつながる心温まるサービスの形とは?>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
バリアフリーな宿泊を目指して...実現のカギとなる工夫
都市の駅や公共交通機関でバリアフリー対応が進んでいる今もなお、多くの障がい者やその家族にとって、旅行には楽しみと共にいくつもの壁が立ちはだかることがある。車いすでの移動の難しさ、トイレの心配、予約時の煩雑な手続き──これらはその一例に過ぎない。旅行を楽しみにしている彼らにとって、こうした小さな問題が積み重なることで、大きな心理的ハードルになることもある。そのため、安心して旅を楽しめる場所を見つけること自体が、大きな挑戦となる場合が多いのだ。
このような状況を踏まえ、障害のある人やその家族が、気軽に旅行や外出ができる社会になってほしいという思いから「誰もが安心して泊まれるホテル」を目指すのが、株式会社コスモスホテルマネジメントだ。特に、日常的に人工呼吸器やたんの吸引などの医療的ケアを必要とする医療的ケア児とその家族が旅行を楽しめるよう、同社はサポートを提供している。
同社が運営する都市型アパートメントホテル「MIMARU」は、東京都、京都府、大阪府に27施設展開しており、家族や仲間と「みんなで泊まる」をコンセプトにしている。医療的ケア児の家族や車いす利用者へのヒアリングを基に、風呂マットやおむつ入れなどの備品を整え、車いすでも移動しやすいルートを掲載したアクセスマップや、車いす目線での館内案内をホームページで公開している。
また、予約時には「コミュニケーションシート」で要望を確認し、個々のニーズに合った対応を準備して、宿泊客を出迎える。全従業員はユニバーサルマナー検定3級を取得しており、利用者の多様なニーズに対応できる体制を整えている。