最新記事
SDGsアワード

「私たちがSDGsプロジェクトを始めた理由」──アワード授賞式レポート

2024年3月26日(火)10時30分
森田優介(ニューズウィーク日本版デジタル編集長)
SDGsアワード

3月15日に開催された「ニューズウィーク日本版SDGsアワード 2023」授賞式。トークセッションでは、受賞者からの「悩み相談」も行われた PHOTOGRAPH BY HIROSHI ENDO

<メディアとしてできることを志向し、昨春に立ち上げた新プロジェクト「ニューズウィーク日本版SDGsアワード」。去る3月15日に授賞式を行い、受賞企業を発表した。企業の持続可能な取り組みを増やすために...>

世界のどこかで誰かが始めた先駆的な取り組みが、地球を持続可能にする1歩となる。大切なのは、その先駆者が2歩目、3歩目と継続していけるか、そして後に続いて歩く者が増えるか。

とりわけその後者、「フォロワー(追従者)を生むこと」に関して、メディアの果たす役割は大きいと考える。

気候変動から生物多様性、ジェンダー、貧困、福祉、教育、廃棄物削減に働きがい、まちづくりまで――。国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、2030年までに解決を目指す課題として、17の目標と、それらを細分化した169のターゲットを定める。

だが現時点で、ほぼ全ての目標が達成困難だとみられており、現実は厳しい。

それでも、歩みを止めるわけにはいかないし、実際に世界中の企業がサステナブルな取り組みを遂行中だ。脱炭素分野をはじめ国内外で次々と導入される規制や、非財務情報であるE(環境)、S(社会)、G(企業統治)を考慮して投資するESG投資の潮流と相まって、SDGsは企業の生存戦略と不可分になったと言っていいだろう。

ニューズウィーク日本版SDGsアワード

PHOTOGRAPH BY HIROSHI ENDO

一方で私たちメディアは、先駆的な企業の取り組みへのフォロワーを生み、社会全体に広めるための努力を十分にしてきただろうか。

画期的な製品や大規模なプロジェクトといった、比較的目立つ事例ばかりを一過性のニュースとして伝えるだけになっていないか。また、ヨーロッパ中心に進んできたSDGsの議論の中で、見過ごされてきた日本企業の実践もあるのではないか。

そういった問題意識から、ニューズウィーク日本版では昨春、「SDGsアワード」プロジェクトを立ち上げた(プロジェクト概要はこちら)。

たとえ小さな取り組みであっても、それをメディアが広く伝えれば、他の企業で新しいアイデアにつながったり、何をすべきかの参考になったりするはず――。そのように考え、日本各地の企業からプロジェクトへの参画を募った。

ニューズウィーク日本版SDGsアワード

そして参画企業の取り組み事例を、本誌ウェブサイトで次々に発信していった。

日本のSDGs研究の第一人者である慶應義塾大学大学院の蟹江憲史教授を外部審査員に招き、厳正な審査を行ってアワード受賞企業を選出。去る3月15日、東京アメリカンクラブ(東京・港区)で授賞式を開催し、受賞企業を発表した。

この後、最優秀賞の事例を英訳し、ニューズウィーク米国版で世界に向けて発信する予定だ。

蟹江憲史

蟹江憲史(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授、同大学SFC研究所xSDG・ラボ代表)/内閣府自治体SDGs推進評価・調査検討会委員、日本政府SDGs推進円卓会議構成員などを務め、国内外でSDGsや環境問題を中心に多方面で活躍。国連事務総長の任命を受けた独立科学者15人の1人として「持続可能な開発に関するグローバルレポート(GSDR)2023」の執筆を行った。専門は国際関係論、サステナビリティ学、地球システム・ガバナンス。SDGs研究の第一人者であり、研究と実践の両立を図っている。主な著書に『SDGs(持続可能な開発目標)』など。 PHOTOGRAPH BY HIROSHI ENDO

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

自民が対米交渉で会合、赤沢再生相「国益や効果考え抜

ワールド

赤沢再生相が16日─18日に訪米、財務長官・通商代

ワールド

中国・ベトナム協力、鉄道2路線の実現可能性調査盛り

ビジネス

日経平均は続伸、米関税への過度な警戒が緩和 自動車
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトランプ関税ではなく、習近平の「失策」
  • 3
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができているのは「米国でなく中国」である理由
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 6
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    シャーロット王女と「親友」の絶妙な距離感が話題に.…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中