介護サービスの質向上のための「マジ神AI」 ベネッセ流の介護DX
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<介護人材が不足する介護業界で、AIソリューションによる問題解決に挑む>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや製品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えのもと、ニューズウィーク日本版はこの春、「SDGsアワード」を立ち上げました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
人の一生の「よく生きる」を支援するベネッセグループの中で、介護事業を展開する株式会社ベネッセスタイルケアが開発した「マジ神AI」は、介護のプロフェッショナルの思考をAIに学習させることで、経験の浅い介護士でも質の高いサービスを提供できるようになることを支援するAIソリューションだ。高齢化と少子化による介護人材不足が深刻な課題となる中で、介護現場の負担を軽減しながら、質の高い介護サービスを提供し、人材育成に寄与することが期待されている。
経験が浅くても熟練の視点で。「マジ神AI」が対応のヒントを提示しサービスの質向上へ
世界の先進国では高齢化が深刻化しており、G7参加国で65歳以上が人口に占める割合はイタリア24.05%、ドイツ22.41%、フランス21.66%となっているが、日本の高齢化率29.92%はトップクラスで、今や国民の3人に1人が65歳以上という「超高齢化社会」に直面している。それに加えて少子化も進んでおり、2040年には約69万人の介護職員の不足が予想されるなど、喫緊の課題となっている。
こうした中で、株式会社ベネッセスタイルケアは、介護業務を支援する「マジ神AI」を開発した。
ベネッセスタイルケアは、高齢者一人ひとりのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上を目指しながら、質の高い介護を実践するプロフェッショナル人材を「マジ神」と呼び、育成と輩出に力を入れている。「マジ神AI」は、「マジ神」の介護業務の中での気づきや対応などの思考を、テクノロジーとかけ合わせた独自のAIソリューションだ。
「『マジ神』は、介護の匠がケアすることで、険しい表情の認知症の方が数時間で笑顔になった際、若手社員が『マジ神っすね』と言ったことが由来となっています。『マジ神AI』があれば、経験の浅いスタッフでも現場で困ったときには匠の視点でAIが対応のヒントを提示してくれるので、現場の負担を軽減しながら、より質の高いサービスの提供することができます」と、ベネッセスタイルケア 介護DX推進部の祝田健氏は話す。