生態系にも影響を与える「光害」を低減、アジア初カテゴリーの「星空の世界遺産」認定を可能にしたパナソニックの照明技術
照明改修を担ったのは、パナソニック エレクトリックワークス社だ。パナソニックは2020年に国内メーカーとして初めてダークスカイ認証を取得しており、2021年、星空保護区に認定された岡山県井原市(大野市とは別の「ダークスカイ・コミュニティ」カテゴリー)からの協力依頼を機に、光害対策型の道路灯と防犯灯を開発している。
星空保護区認定を受ける照明の条件は、照明器具から上空へ漏れる光(上方光束)が一切なく、光の色合いを示す色温度は3000K以下、温かみのある色であること。パナソニックは地域住民の理解と地元の電気業者の協力を得ながら、エリア内の全ての照明を点検・施工していった。最終的に、防犯灯58台、道路灯36台、その他光害対策照明器具を約260台設置した。
地域住民が星空保護に関わることが生態系保護にもつながる
自然・文化的な遺産は、実は認定よりも維持していくことが非常に大変だ。「行政だけでなく地域住民が星空保護に関わり、観光客が増えても対応できる組織をつくること。それが星空だけでなく、生態系や地球全体を守っていくことにつながる」と、下川教授は言う。
2024年3月に北陸新幹線の福井~敦賀間開業、2026年春には中部縦貫自動車道の県内全線開通が予定され、新たな高速交通ネットワークの形成が進む福井県。石山志保・大野市長は「星空をはじめとする観光資源を活かして地域経済の活性化につなげていきたい」と展望を語る。
「福井工業大学、パナソニックとの縁や、学校関係者・星空観測団体などの協力がなければここまで来られなかった。地元民にとって星空がきれいなのは日常のことで、その素晴らしさになかなか気付かない。星空保護区申請への取り組みを通じて、大野市の星空は世界に誇っていいんだと再認識できた」
世界に誇れる満天の星空――。近隣に明るい都市がありながらそれが可能になったのは、光害を低減する照明の最新技術があってこそだ。たかが照明、されど照明。持続可能なまちづくりや生態系の保護にもつながる照明である。
そこに人が暮らし、明かりがある限り、光害は起こり得る。国内外のどの地域であっても、この技術は恩恵を与えられるにちがいない。
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