NYタイムズスクエアはなぜ歩行者天国に変わったか...注目のまちづくり手法「タクティカル・アーバニズム」
何百人もの人が腰かけ、笑顔で語らい、写真を撮っている
『タクティカル・アーバニズム・ガイド 市民が考える都市デザインの戦術』の原書と邦訳から、タクティカル・アーバニズムの特徴を示している箇所を紹介したい。
●The sidewalks, still full of life, would be noticeably less congested. The noise from the street would no longer seem as deafening. And to your astonishment, you would discover hundreds of people smiling, chatting, and taking photographs while they sat in foldable lawn chairs placed in the middle of the street. With space to look up and around to admire the lights you would realize that the new and somewhat makeshift public space is where, just days before, cars and trucks battered all senses. Even if you didn't know the term, you would have just discovered the power and potential of Tactical Urbanism.
(依然として賑やかな歩道は、すっかり混雑が緩和されている。車道から耳をつんざくような騒音はもう聞こえない。何百人もの人々が車道の中央に置かれた折りたたみ式アウトドアチェアに腰かけながら、笑顔で語らい、写真を撮っているではないか。頭上や周囲を見渡せばきらびやかな光があふれ、その新しいにわか仕立てのようなパブリックスペースが、実はほんの数日前に車やトラックが五感を狂わせた場所だとわかる。さあ、これでもう、タクティカル・アーバニズムという用語を知らなくても、その力と可能性がわかったはずだ)
――タイムズスクエアの事例では、普段は車優先のタイムズスクエアが祝日の週末に歩行者優先の広場に早変わりした。「タクティカル・アーバニズムとは何か」をあれこれ説明するより、事例を示したほうが手っ取り早い。
●The result, in some cases, is that normally law-abiding citizens take action without permission and ask for forgiveness later. It can be a powerful method for creating change.
(その結果、普段は法律を順守する市民が許可なく行動を起こし、後で許しを求めることがある。そのような強硬手段に出なければ、変化を起こせないのだ)
――「ゲリラ的横断歩道」はタクティカル・アーバニズムの代表例だ。道路工事の中断で横断歩道が消えたのに、行政は対応してくれない。納得できない1人の市民がスプレー塗料で横断歩道を描いた。警察はこの器物損壊を黙認。運輸省は起訴を考えたが、市議会議員は市民の行為を称賛。結局、不起訴となり、市は横断歩道を完成させた。
●Rather than breaking rules and "asking for forgiveness later"--a common practice in Tactical Urbanism--Rebar used another common strategy: They exploited a loophole in the system.
(規則を破って「後で許しを請う」のは、タクティカル・アーバニズムの常套手段だが、リバーは、「制度の抜け穴を利用する」という別のよくある戦略を用いた)
――「パーキングデー」の例では、デザイン事務所リバーがコインを入れてメーター制路上駐車スペースを借り、ベンチ、人工芝マット、木を置いてミニパークをつくった。メーターが切れると後片付けをして立ち去った。正当に料金を支払ってその場所を借りているので違法性はないというわけだ。
タクティカル・アーバニズムは、車に奪われてしまった街路を取り戻すための市民の挑戦だ。<まちは人が主役なのだ>という一文。著者たちの思いが凝縮されている。
『タクティカル・アーバニズム・ガイド 市民が考える都市デザインの戦術』
マイク・ライドン、アンソニー・ガルシア 著
大野千鶴 訳
泉山塁威+ソトノバ 監修
晶文社
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トランネット
出版翻訳専門の翻訳会社。2000年設立。年間150~200タイトルの書籍を翻訳する。多くの国内出版社の協力のもと、翻訳者に広く出版翻訳のチャンスを提供するための出版翻訳オーディションを開催。出版社・編集者には、海外出版社・エージェントとのネットワークを活かした翻訳出版企画、および実力ある翻訳者を紹介する。近年は日本の書籍を海外で出版するためのサポートサービスにも力を入れている。
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