「ホテル屋上で蜂を育てています」 ザ・サウザンド京都の生物多様性を意識した取り組み
ホテル屋上で養蜂に勤しむザ・サウザンド京都の社員
<身近な気候変動や生物多様性の問題にどう取り組むか。一人の若手社員の言葉から、京都駅前での都市養蜂プロジェクトが始まった>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや製品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えのもと、ニューズウィーク日本版はこの春、「SDGsアワード」を立ち上げました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
ミツバチは植物の生育と繁栄に欠かせない存在だ。そのミツバチが世界各地で減少していることが報告され、私たちの食生活への影響も叫ばれる中、古都・京都の中心部でユニークな「都市養蜂プロジェクト」が立ち上げられた。舞台は、京都駅前に位置するホテル「ザ・サウザンド京都」の屋上である。
都市部にあるホテルの屋上で、社員が自らの手でミツバチを飼育
多くの植物は、昆虫が花粉を運んで受粉することで繁殖する。特にミツバチは世界の主要な農作物の70種以上の受粉を支えていると言われており、人間にとっては欠かせない存在だ。しかし現在、気候変動による生息地の減少などにより、世界中でミツバチが激減しており、食糧生産への影響が危惧されている。
こうした中で、身近な気候変動や生物多様性保全の問題を意識し、ザ・サウザンド京都が開始したのが「都市養蜂プロジェクト」だった。
このプロジェクトは、同ホテルの屋上でミツバチを飼育し、副産物としてのはちみつを採取するという取り組み。ミツバチを育てることで、生態系や食文化、地球環境の保全に繋げるという狙いがある。
一人の若手社員が発した「屋上で蜂を飼いませんか?」というひと言をきっかけに、同社の社員でプロジェクトメンバーを結成。日々の業務と並行しつつ、養蜂家からの電話やメールでのアドバイスをもとに、自分たちの手でミツバチを飼育している。年に2回は岐阜県にある養蜂家のもとで研修を実施し、シーズン毎に勉強会を開催するなどして、養蜂の技術と知識を磨いているという。
屋上で採取したはちみつは、ホテルレストランの食材として提供したり、瓶詰めにして商品として販売することで、地産地消にも繋げている。
2022年には、ザ・サウザンド京都のはちみつが、世界に誇れる日本文化を未来の世代に向けて発信する「京都(関西)サステナブル展in Brooklyn」にも出品された。地球環境に配慮したサステナブルな商品として高い評価を受けている。