空き家の古民家から新たな価値を創出 世界から注目を集める山翠舎の「古木」
常時5000本を超える古木のストック
<古民家から出てきた建材を、家具や店舗にアップサイクルして環境問題に対処する>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや製品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えのもと、ニューズウィーク日本版はこの春、「SDGsアワード」を立ち上げました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
株式会社山翠舎は、廃棄されていた古材に新たな価値を創出することで「古木*」として再利用し、事業を展開している。同社はこの事業で、地方を中心に深刻化している空き家問題をはじめ、環境・社会・経済といった幅広い課題解決に繋げることを目指している。
*古木:山翠舎の定義では、戦前に建てられた築80年以上の古民家の解体から発生した柱、梁、桁、板の木材のこと。
捨てられるだけだった古民家を「古木」として生まれ変わらせる
昨今、日本では地方の衰退が急速に進んでおり、空き家や空き店舗の増加が社会問題となっている。特に空き家となった古民家の再利用は高度な技術とコストが必要となるため、大半が取り壊され、廃棄されているのが現状だ。
長野県の建築会社である株式会社山翠舎は、従来は価値がなかった古材に、ストーリー性や希少性をもたせることで「古木」というアップサイクル商品に転換。その古木を利活用することで環境・社会・経済の課題解決に繋げるといった、サーキュラーエコノミーの活動を推進している。
具体的には、古木を活用した店舗内装設計や施工のほか、古民家移築工事、改修工事、古木専門工事、古木家具販売といった事業を展開。古民家が古木として再利用されることで、廃棄物として焼却処分されることがなくなり、CO2の排出を抑制することができる。
さらに、古木を活用したイベントスペース&コワーキングスペース「FEAT.space」「合間」も運営している。古木の再利用に加え、持続可能な働き方を実践する人々が自由に集い、新たな価値を生み出す空間を創出しており、地域活性化や経済発展にも寄与していると言えるだろう。
今年10月からは「キッザニア東京」で古民家再生事例などを紹介した展示も開始。古民家が持つ文化的価値や、それらを活用した持続可能なまちづくり、さらにはSDGsの取り組みの意義を、次世代を担う子どもたちが遊びながら学べる機会を提供している。