突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
どの食事にどのくらいプリン体が含まれているか
痛風が確定した瞬間、口にするすべてのものがもはや怖くなってしまった。どの食事にどんな量のプリン体が含まれているのか。いかなる食材も、どの程度のプリン体が含まれるのか知るまでは、口にすることはできない。
なぜなら、プリン体なるものが、溢れ出て僕の足にこんな激痛を起こしているからして、これ以上この痛みのもとをどうして受容できようか。
それまでの人生で全く気にすることのなかった視線で、冷蔵庫の食品を見つめる。どこぞのウェブサイトで見つけた、一般的な食品に含まれるプリン体リストを携帯にダウンロードして、その表を眺め続けた。
まずプリン体が桁違いに多いのが、動物の肝臓である「レバー」である。鳥のレバーにしろ、牛のレバーにしろ、豚のレバーにしろ、その量は表の中でも桁違い。(これは肝臓でプリン体が、尿酸に変換されることに関係しているのだろうか?)
冷蔵庫に残ったレバーのパックをまじまじと見つめる。この赤黒く光る牛の肝臓の食べ過ぎにより、僕の足で尿酸の氾濫を起こしたのかと思うと、その塊が何とも憎かった。迷わずにパックごと、ゴミ箱に捨て去る。
それから「魚卵類」。特に粒の小さなたらこやカラスミや数の子などは、レバーに次いで値が高い。反対に筋子やイクラは、イメージよりもその値は少なめである。
それからアジやサバなどの「青魚」、特にその干物なども、単体でプリン体を多く含む食材である。
プリン体の多い食事。それら全ては、僕の大好物ばかりだった。それらが食べられなくなる生活。考えただけでも辛い。ただ、この激痛とどっちが良いかと聞かれたなら、その天秤は容易く、プリン体を多く含むおいしいものを我慢することに傾く。
一方プリン体がほとんど含まれない食品なるものもある。意外にも鶏の卵にはほとんどプリン体は含まれない。それから、もずくやわかめなどの海藻類。
野菜などもプリン体がゼロではないが、肉類から目を移すとホッとするような数字が並ぶ。穀物類も総じてプリン体は少ない。これまでそんな風に、世の食材を分類したことはなかったが、これからはプリン体フィルターの解像度を上げて世の中を分解していかなくてはなるまい。
そんな実感は痛風を発症してしまった人にならきっと共感してもらえる体験に違いない。
唯一の楽な姿勢は足を上げて寝転んだ状態
痛風患者の必須習得事項とも言える「プリン体含有量、全食物リスト」をぼうっと眺めながらも、足は何もせずとも激痛で立っていられないほどである。
唯一の楽な体勢は、足を上げて患部よりも心臓の位置を低くするために寝転ぶこと。数日間は体勢を変えるだけで激痛。水だけをガブガブと飲み続けるが、水を飲み続けるとどうしてもトイレだけには行かなくてはならない。が、そのために立ち上がるとまた激痛。
夏休みに入って毎日家にいる小学生の娘は、そんな僕を呆れて哀れみの目で眺めていた。夏休みゆえに何処かへ出かけたい気持ちを抑え、不自由な僕に付き合ってくれていた。僕は、ただ寝転んでスマートフォンで「痛風」「腎臓」「プリン体」「尿酸値」、などの検索ワードで出てくるテキスト情報や動画情報を貪るように見ていた。
足の痛みに耐えながら眺めるそれらの情報たちは、本当に生存に関わるものである気がしていたのだった。
そして、小さな画面を見るのに疲れると、部屋から見える空を眺め、この理不尽とも言える激痛の嵐が去るのを待ち続けるのだった。
人間は、何はせずとも腹だけはすく。そして腹がグゥと鳴ると、今までとは全然違った視線で冷蔵庫を眺める。眺めるだけ眺めては、怖くなって冷蔵庫を閉じる。
初めの2日ほどは、お腹が空いても痛みが怖くて何かを食べる気になれず。プリン体がほぼ全く含まれないという卵を茹でて、食べてみたりして凌ぐ。医者に言われたように水だけは、毎日4〜5リットル近く飲み続けたが、それが腹の足しになるわけではない。
痛風発症時、黄色からオレンジ色に近い色をしていた自分の尿は、だんだんと日を追って無色の尿に変化していった。あんな色の自分の尿を見たのは初めてだった。相当に腎臓に負荷をかけた生活をしていたことを思い知る。