コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイジャーの「長寿体質の秘密」とは?

2025年3月21日(金)08時50分
ニール・バルジライ (アルバート・アインシュタイン医科大学教授)

見つけた結果にわたしたちは驚いた。これらの脂肪性のコレステロール分子はたいてい大きな集団にまとめられて、血液のなかを体の隅々まで運ばれる。センテナリアンとその子の場合、HDL(善玉)が多いだけでなく、HDL(善玉)とLDL(悪玉)の粒子がふつうよりずっと大きかったのだ。

大きなHDL(善玉)とLDL(悪玉)の粒子は、高血圧や、心臓血管疾患、メタボリック症候群のリスク低減につながる。それどころか、小さな粒子は酸化しやすく、アテローム性動脈硬化の最初のステップが始まるきっかけになると考えられている。

さらにあとでわかったことだが、対照群のうちで高血圧や心臓血管疾患がない人も、平均より非常に大きなHDL(善玉)とLDL(悪玉)の粒子を持っていた。


 

センテナリアンのHDL(善玉)値が高い理由のひとつは、特殊なキャリア(ApoA/アポリポ蛋白A)に詰めこまれているからだ。そのおかげで、ふつうより多くのコレステロールが動脈から運ばれる。

センテナリアンのLDL(悪玉)値はふつうと変わらないが、平均より大きな構造になりやすく、「荷物」を運ぶための特殊なキャリア(ApoB/ アポリポ蛋白A)を持っている。構造が大きいほうが酸化しにくいので、アテローム性動脈硬化を引き起こすプラークができにくい。

このように、話はかなり複雑だ。センテナリアンのコレステロールの特徴は総HDL(善玉)値なのか、それともLDL(悪玉)とHDL(善玉)の比率か、HDL(善玉)粒子が大きいことか、LDL(悪玉)粒子が大きいことか、もしくは以上のどれかの組み合わせか、または全部なのか、はっきりとはいえないからだ。

理由はなんであれ、これらのうち1つ以上の特徴を持つセンテナリアンは心臓病やアルツハイマー病になりにくく、認知機能が優れていて、もちろん長生きする。いずれにしても、もっと大きな疑問はこれだった。この違いは何によるのだろうか?

施設内倫理委員会から承認を得ると、さっそくコレステロールの生成と輸送に関係するさまざまな遺伝子を調べはじめた。すると、HDL(善玉)コレステロールと中性脂肪を調節する2つの遺伝子に機能的な多様体があることを発見した。

つまり、その遺伝子が変異のせいで違う働きをするということだ。また多くのセンテナリアンが、コレステロール粒子の集団化に影響する遺伝子多様体を1つか2つ持っていた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、復活祭の一時停戦を宣言 ウクライナ

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪肝に対する見方を変えてしまう新習慣とは
  • 3
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず出版すべき本である
  • 4
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 5
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 9
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 10
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 9
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中