コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイジャーの「長寿体質の秘密」とは?
見つけた結果にわたしたちは驚いた。これらの脂肪性のコレステロール分子はたいてい大きな集団にまとめられて、血液のなかを体の隅々まで運ばれる。センテナリアンとその子の場合、HDL(善玉)が多いだけでなく、HDL(善玉)とLDL(悪玉)の粒子がふつうよりずっと大きかったのだ。
大きなHDL(善玉)とLDL(悪玉)の粒子は、高血圧や、心臓血管疾患、メタボリック症候群のリスク低減につながる。それどころか、小さな粒子は酸化しやすく、アテローム性動脈硬化の最初のステップが始まるきっかけになると考えられている。
さらにあとでわかったことだが、対照群のうちで高血圧や心臓血管疾患がない人も、平均より非常に大きなHDL(善玉)とLDL(悪玉)の粒子を持っていた。
センテナリアンのHDL(善玉)値が高い理由のひとつは、特殊なキャリア(ApoA/アポリポ蛋白A)に詰めこまれているからだ。そのおかげで、ふつうより多くのコレステロールが動脈から運ばれる。
センテナリアンのLDL(悪玉)値はふつうと変わらないが、平均より大きな構造になりやすく、「荷物」を運ぶための特殊なキャリア(ApoB/ アポリポ蛋白A)を持っている。構造が大きいほうが酸化しにくいので、アテローム性動脈硬化を引き起こすプラークができにくい。
このように、話はかなり複雑だ。センテナリアンのコレステロールの特徴は総HDL(善玉)値なのか、それともLDL(悪玉)とHDL(善玉)の比率か、HDL(善玉)粒子が大きいことか、LDL(悪玉)粒子が大きいことか、もしくは以上のどれかの組み合わせか、または全部なのか、はっきりとはいえないからだ。
理由はなんであれ、これらのうち1つ以上の特徴を持つセンテナリアンは心臓病やアルツハイマー病になりにくく、認知機能が優れていて、もちろん長生きする。いずれにしても、もっと大きな疑問はこれだった。この違いは何によるのだろうか?
施設内倫理委員会から承認を得ると、さっそくコレステロールの生成と輸送に関係するさまざまな遺伝子を調べはじめた。すると、HDL(善玉)コレステロールと中性脂肪を調節する2つの遺伝子に機能的な多様体があることを発見した。
つまり、その遺伝子が変異のせいで違う働きをするということだ。また多くのセンテナリアンが、コレステロール粒子の集団化に影響する遺伝子多様体を1つか2つ持っていた。