「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
ストレスホルモンのコルチゾールについては、40%の食事制限がストレスをもたらすので値が上がるが、コルチゾールを高齢の動物に投与すると、じつは寿命が短くなる。
わたしの考えでは、ヒトにもっとも関係するカロリー制限の研究は、遺伝によってカロリー制限の効果がどう変わるかを示した研究だ。
サンアントニオ出身の同僚ジム・ネルソンが、同僚たちとともにこの興味深い研究を行い、遺伝的にまったく違う2匹のマウスを交配させた。
すると、マウスは41の遺伝的に異なる背景を持つオスとメスの子どもたちを産んだ。マウスたちは好きなだけ食べるか、カロリー制限されているかどちらかだが、意外にも、カロリー制限したマウスの約半数だけが、好きなだけ食べたマウスより長生きし、残りの半数は寿命が短かった。
これは遺伝的背景が重要であり、カロリー制限が例外なく効くわけではないことを意味している。ヒトの場合も、カロリー制限が長寿につながるかどうかは遺伝的背景による。また、制限すべきカロリー量もDNAによって違うかもしれない。
この研究の欠点のひとつは、カロリー制限を40%よりゆるくしていたら、長寿のマウスがもっと見られたかもしれないということだ。もしカロリーを20%減にしていたら、カロリー制限されたマウスの半数よりかなり多くが、好きなだけ食べたマウスより長生きしていたと思う。
ニール・バルジライ (Nir Barzilai)
1955年生まれ。アルバート・アインシュタイン医科大学教授。同大学老化研究所設立者。ポール・F・グレン老化生物学研究センター、およびアメリカ国立衛生研究所(NIH)ネイサン・ショック・センター加齢基礎生物学部門のディレクターも務めている。専門は内分泌学。100歳を超える長寿家系を調べ、ヒトの長寿遺伝子を世界で初めて発見した。長寿研究の世界的権威として、全米老年問題研究連盟(AFAR)「アーヴィング・S・ライト賞」など数々の賞を受賞している。本書が初の一般書となる。
『SuperAgers スーパーエイジャー 老化は治療できる』
ニール・バルジライ/トニ・ロビーノ[著]
牛原 眞弓[訳]
CCCメディアハウス[刊]
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