便秘が「大腸がんリスク」であるとは、実は証明されていなかった...もっと心配すべき「フレイル」とは何か?【最新研究】
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<たかが便秘、されど便秘である理由について、腸内研究の第一人者である内藤裕二・京都府立医科大学教授が解説>
脳、がん、肥満、メタボ、長寿、免疫、老化、便秘...。すべては腸内細菌に関係があった。
腸内研究の第一人者である内藤裕二・京都府立医科大学教授による話題書『健康の土台をつくる 腸内細菌の科学』(日経BP)より第8章「便秘と大腸がん腸内細菌との関係は」を一部編集・抜粋。
便秘が大腸がんの発症リスクになると考えている人は多いのではないでしょうか。しかし、現時点では便秘と大腸がんのリスクに明確な関連は見つかっていないのです。
便秘と大腸がんリスクの関係を示す報告がいくつかあるにはあるのですが、少なくとも国立がん研究センターが実施した多目的コホート(JPHC Study)では「排便回数と大腸がんに関係はない」と結論付けられています。
また、2013年に英国の研究者らが発表した複数の研究を統合解析したメタアナリシス[*1]でも、便秘と大腸がんの関連を決定づけるようなものはないと報告されています。
現時点でいえるのは、慢性便秘を抱えている人はそうでない人と比べて10年後、15年後の生存率が有意に低いこと[*2]。また、慢性腎臓病(CKD)や急性心筋梗塞などの病気を発症するリスクや、パーキンソン病などの神経変性疾患のリスクが高いこともわかってきました。
東北大学が、宮城県大崎保健所管内の国保加入者を対象に行った観察研究「大崎国民健康保険コホート(大崎国保コホート)」からは、排便頻度が少ない人は、1日1回排便がある人に比べて循環器疾患での死亡リスクが高いことが明らかになっています[*3]。
また、加齢に伴う筋肉量や筋力の低下である「サルコペニア」、加齢に伴う体力・気力の低下による虚弱状態「フレイル」と、便秘の関連についての研究も始まっています。
フレイルは〝寝たきり予備軍〞ともいえる状態で、その対策は健康長寿を目指すうえで非常に重要です。ほかの病気と同様に早期発見と予防が必要なのです。