「臓器を摘出」する予防法も...がんは「治す」から「防ぐ」時代に、新たな医療アプローチ「VBC」とは?

AN OUNCE OF PREVENTION

2025年1月23日(木)17時44分
アレクシス・ケイサー(医療担当)

テキサス州ベイタウンもこの取り組みの対象エリアだ。ここには、全米で3番目に大きい製油所であるエクソンモービルのベイタウン製油所がある。

ピスターズによると、製油所近辺の住民はある種の癌のリスクが高い可能性があり、エクソンモービルはMDアンダーソンの協力を得て、新鮮な農産物を住民に配ったり、ウオーキングクラブを設立するなどの取り組みを進めている。


MSKも地元ニューヨークで同様の活動を行っている。「移民の健康と癌格差」プログラムでは、巡回型の保健チームが市内各地に赴き、医療保険制度について説明し、健康面の不安などの相談に乗っている。

このプログラムでは、例えばニューヨークのタクシー運転手向けに保健サービスと健康診断や癌検診を無料で提供している。タクシー運転手はずっと座って仕事をし、しばしば食生活も健康的とはいえず、大気汚染が深刻な場所で長時間過ごす。これらの要素は、癌と循環器疾患のリスクを高めることが分かっている。

MSKの乳腺腫瘍科医ニール・アイエンガーは「生活習慣の最適化」の重要性を説く。具体的には、好ましい食生活と運動により、肥満度の判定基準であるBMI(体格指数)を27未満に抑え、体内時計に合った良質な睡眠を取り、過度の日焼けを防ぎ、喫煙とアルコールの摂取を避けよ、というのだ。

これらを実践できていれば、「その人は大多数の(癌の)リスクが軽減されていると見なせる」とのことだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

第2次トランプ政権で初の大型IPO、LNG大手17

ワールド

ブルームバーグ氏慈善組織、トランプ氏が中止する国連

ワールド

中国と貿易合意可能とトランプ氏、関税「使わない方が

ビジネス

25年春闘は昨年以上の結果出す、毎年5%以上の賃上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 4
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 5
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 6
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 7
    電気ショックの餌食に...作戦拒否のロシア兵をテーザ…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 10
    【トランプ2.0】「少数の金持ちによる少数の金持ちの…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中