「臓器を摘出」する予防法も...がんは「治す」から「防ぐ」時代に、新たな医療アプローチ「VBC」とは?
AN OUNCE OF PREVENTION
高リスクの集団に重点を置く
地域の総合病院が予防医療に取り組む場合は、対象がはっきりしている。こうした病院が医療サービスを提供する地理的な範囲は明確に線引きされていて、救急搬送される患者数などから重点地区もピックアップしやすい。
多くの場合は、地域の総合病院と連携している地元の開業医など、いわゆるプライマリーケアを提供する医師が、その地域の住民に生活習慣の改善などを助言する。
だが専門病院の場合、予防医療の対象となる「地域住民」が明確ではない。名だたる専門病院には世界中から患者が集まってくるからだ。
しかも癌専門病院には連携している開業医のネットワークもないため、違った形で予防医療に取り組む必要があると、MSKの経営者であるシェリー・アンダーソンは本誌に語った。
アンダーソンによれば、癌を引き起こす要因は遺伝子と生活習慣と環境だ。このうち2つはある程度まで制御できるが、遺伝子は変えられない。
そこでMSKでは、患者の癌が遺伝性とみられる場合、希望があれば親族の遺伝子検査を行う。変異遺伝子が見つかると、予防的に臓器の摘出手術を受けるなど「大胆な選択」をする人もいると、アンダーソンは言う。
一方、テキサス州ヒューストンのMDアンダーソンには癌予防の研究調査と地域で実践される啓発活動の立案を行う専門部門がある。
同部門が立案した「ビー・ウェル・コミュニティーズ」は、癌のリスクが高い地域に重点的に資源と支援をつぎ込み、住民の健康向上を推進している。