坂東眞理子が語る、宮沢賢治「雨にも負けず」に学ぶこれからのリーダーに必要なこと
「人間は生まれてくるときも一人、死ぬときも一人。そう達観すれば、生きているときに一人であることをさびしがることはない」といわれます。
たしかにそうなのですが、ほとんどの人は、自分の努力を、あるいは苦しさや理不尽な仕打ちに耐えていることを知ってもらいたい、認められたい......と願っています。
自分が何をしても、どうなっても誰も関心を持ってくれないのだと思うと、深い孤独感にとらわれてしまいます。
【「自分を励ます一番いい方法は人を励ますことだ」】
私も20代のころ、長女の子育てをしている駆け出しの公務員で、仕事にも子育てにも自信が持てず、「自分はどうなっていくのだろう」「力がないから子育ても仕事も両方は無理かな」と、将来が見えず苦しんでいました。
そのとき、「大変なのによく頑張っているね」と声をかけてくれた人に、どれだけ救われたことでしょうか。
若いときは、物事を成し遂げるのに大事なのは自己実現の意欲や上昇意欲だと考えていましたが、長い人生を生きてきて、いまは共感の力が社会活動、経済活動の源になるのだと思うようになりました。
宮沢賢治の「雨にも負けず......」の詩も、「飢饉の夏はおろおろとするだけでなんの役にも立てないけど、人々の苦しみに寄り添う存在がじつは大事なのだ」と伝えてくれます。
私は、これからのリーダーは「3つのS」――sympathy(シンパシー〈共感〉)、share(シェア〈分かち合い〉)、support(サポート〈助け合い〉)し合うことが大事だと考えています。
大きな課題や目標を他人事だと思わず仲間とshareする、お互いに力を出し合い補い合って取り組む(support)、そして何よりも困っている人、苦しんでいる人に共感する(sympathy)、この3つのSです。
この3つとも、困っている人、苦しんでいる人への共感が背景にあります。それがエネルギーの源になるのではないかと思います。
「自分なんて何もできない」「誰からも必要とされていない」「人に迷惑をかけないのが一番」などという気分になると、穴に引きこもりたくなりますが、おそらくそうした3つのSがあれば、どれだけ歳を重ねてもやるべきことがたくさん見つかって、生涯現役でいられるのではないかと期待しています。
共感する力は、自分に生きる力を与えます。アメリカの文豪マーク・トウェインも「自分を励ます一番いい方法は人を励ますことだ」と、素敵な言葉を遺しています。
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