アングル:ドル/円に押し寄せる2つの大波、140円割れの攻防へ

4月7日、外為市場でドル安/円高圧力が強まってきた。画像は米ドルと円紙幣。2022年9月撮影のイメージ写真(2025年 ロイター/Florence Lo/Illustration)
Shinji Kitamura
[東京 7日 ロイター] -
外為市場でドル安/円高圧力が強まってきた。トランプ関税による世界同時不況への警戒感から株安の連鎖が止まらず、リスク回避の円高と米金利低下のドル安が交互に押し寄せる構図となっている。市場では、チャートから判断して昨年9月安値の140円割れの攻防になるとの指摘が増えている。
<潮流変化>
前週来のドル/円は下落基調が続いているだけにも見えるが、内情はやや複雑だ。関税の発表直後は、各国株価の急落を受けて円が独歩高となってドル/円の下げをけん引したが、その後は米10年債利回りが節目の4%台を割り込む中、ドルが全面安となる形で、ドル/円の下げを主導した。
円高からドル安へ、潮目が変わったきっかけとされるのが、米金利の急速な低下だ。高関税政策は米国の輸入減少がドル安圧力を緩和させることや、インフレ率上昇で利下げが後ずれする可能性があるなどとして、ドル高材料と位置付ける声が多かった。
一方、蓋を開けてみると、3日のドル指数の下落率は、日本政府の円買い介入で不安定さを増していた2022年11月以来、2年5カ月ぶりの大幅安を記録した。
モルガン・スタンレーのストラテジスト、アンドリュー・ワトラス氏は、最近対話をした米国籍以外の投資家の間で「(米国や海外の)成長率や金利見通しの変化に対する持ち高調整ではなく、対米投資そのものを減らそうと考えている、との話が出ている」と明かす。
そこには政策の不透明感のみではなく、トランプ氏が以前から不満を漏らしているドル高修正に対する警戒感もくすぶっているという。
<投機の円買い、なお過去最大級>
ドルが当面の下値めどとされていた3月安値の146円半ばをあっけなく突破したことで、テクニカル的に目立った節目は「昨年9月の140円割れまで見当たらない」(りそなホールディングスのシニアストラテジスト、井口慶一氏)状況となってきた。
年末にドルが140円付近へ下落すると予想しているシティグループ証券チーフFXストラテジストの高島修氏も、ドル/円は2番底を探る局面にあるとして「350日移動平均線が走る151円台へ戻らない限り、下落を警戒し続ける必要がある」としている。
米商品先物取引委員会(CFTC)がまとめたIMM通貨先物の非商業部門の取組状況によると、投機筋の円買い持ちは1日時点で12万枚超と、過去最大の円買いを記録した3月上旬から1カ月近くが経った後も、歴史的な高水準を維持している。
ドル/円の売り仕掛けは、金利の高いドルを売り持ちにする一方、低い円を買い持ちにするため金利差損が生じ、相場が変動しなくても、金利差分の損失が日々発生する。
短期的な変動で収益を狙う投機筋には大きな足かせとなるはずだが、それを承知で高水準に積み上がり続けているのは「目先の小さな損失を十分補うだけの値動き、ドル/円の大きな下げが期待できると考えている参加者がそれだけ多い」(りそなHDの井口氏)ことを示している。
日本時間9日午後1時1分には、各国に追加関税が発動され、日本にも計24%の関税が課せられる。ドル/円に限らず、市場の動揺はしばらく収まりそうにない。
(基太村真司 編集:橋本浩)
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