最新記事
家族

「実はガールフレンドがいるの」──変わる日本社会、いまだ変わらない法律

I Can't Get Married in Japan

2022年7月28日(木)16時43分
テレサ・スティーガー(同性婚法制化を求める原告団の1人)
子供

8月には彼女たちの子供をテレサが出産する予定だ COURTESY THERESA STIEGER

<60%近くが同性婚を支持するというように、日本社会は変わりつつある。しかし、子供の親権や国籍、相続の問題など、法律が現状や実態に追いついていない事態が起きている。同性婚を国はどう考えていくべきか>

大阪のバーで友人たちとお酒を飲んでいたら、若い女性2人から「どんな男性がタイプ?」と聞かれた。「実はガールフレンドがいるの」と、私は答えた。

2人の表情から、彼女たちには予想外の答えだったことが分かった。レズビアンの人に会うのは初めてと2人は言い、さらにいろいろと質問してきた。

2人は「外国人にはそういう人もいるのかな」といった理解をしていたようだった。だから、私のパートナーが日本人だと明かすと、とても驚いていた。

時は2009年。LGBTQ(性的少数者)の問題は、まだ日本では現実味をもって受け止められていなかった。

私は米オレゴン州出身で、06年に大学を卒業し、日本で英語教師の仕事に就いた。パートナーの坂田麻智とは08年に、共通の友人を通じて知り合った。自然な流れで交際するようになり、13年には2人で家を買った。

日本では、LGBTQに対して悪いイメージがある。周囲から変な目で見られるという理由で、今も多くのLGBTQが性的指向を隠している。

それでも、この10年で状況は変わってきた。ニュースや教育現場でLGBTQの問題を扱うことが増え、理解も高まっている。NHKが昨年行った世論調査では、回答者の60%近くが同性婚を支持している。私たちの近所の人たちも同性愛者に偏見を持たず、いつも温かく接してくれる。

それなのに、日本ではまだ麻智と私は結婚できない。私たちは15年にオレゴンで結婚したが、日本の法律では同性婚が認められていない。

19年には、地元の京都で婚姻届を提出しようと試みた。しかし女性同士の結婚は認められていないから、婚姻届は受理できないと言われた。

予想していた結果ではあったが、どんなに頑張っても異性のカップルと同じ待遇は得られないという現実を突き付けられた。不平等を直視せざるを得ず、この状況を打破するには訴訟を起こすしかないと思えた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中