「実はガールフレンドがいるの」──変わる日本社会、いまだ変わらない法律
I Can't Get Married in Japan
8月には彼女たちの子供をテレサが出産する予定だ COURTESY THERESA STIEGER
<60%近くが同性婚を支持するというように、日本社会は変わりつつある。しかし、子供の親権や国籍、相続の問題など、法律が現状や実態に追いついていない事態が起きている。同性婚を国はどう考えていくべきか>
大阪のバーで友人たちとお酒を飲んでいたら、若い女性2人から「どんな男性がタイプ?」と聞かれた。「実はガールフレンドがいるの」と、私は答えた。
2人の表情から、彼女たちには予想外の答えだったことが分かった。レズビアンの人に会うのは初めてと2人は言い、さらにいろいろと質問してきた。
2人は「外国人にはそういう人もいるのかな」といった理解をしていたようだった。だから、私のパートナーが日本人だと明かすと、とても驚いていた。
時は2009年。LGBTQ(性的少数者)の問題は、まだ日本では現実味をもって受け止められていなかった。
私は米オレゴン州出身で、06年に大学を卒業し、日本で英語教師の仕事に就いた。パートナーの坂田麻智とは08年に、共通の友人を通じて知り合った。自然な流れで交際するようになり、13年には2人で家を買った。
日本では、LGBTQに対して悪いイメージがある。周囲から変な目で見られるという理由で、今も多くのLGBTQが性的指向を隠している。
それでも、この10年で状況は変わってきた。ニュースや教育現場でLGBTQの問題を扱うことが増え、理解も高まっている。NHKが昨年行った世論調査では、回答者の60%近くが同性婚を支持している。私たちの近所の人たちも同性愛者に偏見を持たず、いつも温かく接してくれる。
それなのに、日本ではまだ麻智と私は結婚できない。私たちは15年にオレゴンで結婚したが、日本の法律では同性婚が認められていない。
19年には、地元の京都で婚姻届を提出しようと試みた。しかし女性同士の結婚は認められていないから、婚姻届は受理できないと言われた。
予想していた結果ではあったが、どんなに頑張っても異性のカップルと同じ待遇は得られないという現実を突き付けられた。不平等を直視せざるを得ず、この状況を打破するには訴訟を起こすしかないと思えた。