最新記事
家族

「実はガールフレンドがいるの」──変わる日本社会、いまだ変わらない法律

I Can't Get Married in Japan

2022年7月28日(木)16時43分
テレサ・スティーガー(同性婚法制化を求める原告団の1人)

壁にぶち当たった気持ち

そこで私たちは同じ19年、ほかの2組の同性カップルと共に大阪地裁に申し立てを行った。私たちの結婚が認められなかったのは、婚姻の自由や法の下の平等を保障した憲法の規定に違反すると訴え、同性婚を認める法整備を怠ってきた国に賠償を求めた。

しかし、今年6月に下された判決はひどいものだった。裁判所は同性婚を認めない民法や戸籍法の規定は合憲だと判断し、1人当たり100万円の損害賠償を求める訴えは棄却された。大変なショックだった。

ありがたいことに、周囲の人々は理解がある。職場では多くの人が「ニュースを見たよ。本当にひどいね」と言ってくれた。友人や近所の人からも、信じられない判決だというメールをもらった。こういう反応はうれしかった。

裁判で同性婚が認められなかったことは、周囲に受け入れられてきた今までの経験とは正反対のもので、壁にぶち当たったような感じがする。私たちがどんなに頑張っても、どんなに多くの人に受け入れられても、法律は私たちのことを認めない。

私たちにとって、これは平等をめぐる問題だ。憲法は平等を保障するためにある。

相続権も大きな問題の1つだ。私たちの家は麻智の名義になっているが、仮に麻智が先に亡くなった場合、そのまま私が相続することはできない。私に残すという遺言書を作ったとしても、一定の親族が受け継ぐ場合より相続税はかなり高くなる。

でも、それ以上に心配なのは、8月に生まれる予定の私たちの子供のことだ。出産するのは私なので、親権を持つのは私だけになる。私との結婚が認められていない麻智には親権が与えられず、子供の出生届にも名前は載らない。書類上は同居人になる。

もし私が先に死んだら、子供はどうなるのか。アメリカの書類で麻智が後見人として認められたら、自動的に親権を得られるかもしれない。そうでなければ、私の両親に親権が渡るかもしれない。いずれにせよ麻智は、日本で養子縁組の手続きを取らなくてはならないだろう。

子供も今のままでは日本国籍を取得できない。日本では子供の国籍は親の国籍に基づくため、私たちの子は米国籍しか得られない。日本で麻智と結婚できれば、子供は二重国籍を認められ、22歳になるまでにいずれかの国籍を選択できるのだが。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ビットコインが10万ドルに迫る、トランプ次期米政権

ビジネス

シタデル創業者グリフィン氏、少数株売却に前向き I

ワールド

米SEC委員長が来年1月に退任へ 功績評価の一方で

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦争を警告 米が緊張激化と非難
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中