「実はガールフレンドがいるの」──変わる日本社会、いまだ変わらない法律
I Can't Get Married in Japan
壁にぶち当たった気持ち
そこで私たちは同じ19年、ほかの2組の同性カップルと共に大阪地裁に申し立てを行った。私たちの結婚が認められなかったのは、婚姻の自由や法の下の平等を保障した憲法の規定に違反すると訴え、同性婚を認める法整備を怠ってきた国に賠償を求めた。
しかし、今年6月に下された判決はひどいものだった。裁判所は同性婚を認めない民法や戸籍法の規定は合憲だと判断し、1人当たり100万円の損害賠償を求める訴えは棄却された。大変なショックだった。
ありがたいことに、周囲の人々は理解がある。職場では多くの人が「ニュースを見たよ。本当にひどいね」と言ってくれた。友人や近所の人からも、信じられない判決だというメールをもらった。こういう反応はうれしかった。
裁判で同性婚が認められなかったことは、周囲に受け入れられてきた今までの経験とは正反対のもので、壁にぶち当たったような感じがする。私たちがどんなに頑張っても、どんなに多くの人に受け入れられても、法律は私たちのことを認めない。
私たちにとって、これは平等をめぐる問題だ。憲法は平等を保障するためにある。
相続権も大きな問題の1つだ。私たちの家は麻智の名義になっているが、仮に麻智が先に亡くなった場合、そのまま私が相続することはできない。私に残すという遺言書を作ったとしても、一定の親族が受け継ぐ場合より相続税はかなり高くなる。
でも、それ以上に心配なのは、8月に生まれる予定の私たちの子供のことだ。出産するのは私なので、親権を持つのは私だけになる。私との結婚が認められていない麻智には親権が与えられず、子供の出生届にも名前は載らない。書類上は同居人になる。
もし私が先に死んだら、子供はどうなるのか。アメリカの書類で麻智が後見人として認められたら、自動的に親権を得られるかもしれない。そうでなければ、私の両親に親権が渡るかもしれない。いずれにせよ麻智は、日本で養子縁組の手続きを取らなくてはならないだろう。
子供も今のままでは日本国籍を取得できない。日本では子供の国籍は親の国籍に基づくため、私たちの子は米国籍しか得られない。日本で麻智と結婚できれば、子供は二重国籍を認められ、22歳になるまでにいずれかの国籍を選択できるのだが。