最新記事

医療

光酸化ストレスから食生活まで。失明を引き起こす目の病気「加齢黄斑変性」の発症要因とは?

2022年2月7日(月)11時55分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
パソコンで目を酷使

insta_photos-iStock.

<将来に備えるうえで、加齢黄斑変性(AMD)の発症要因を知っておくことは重要。何しろ、日本人の視覚障害の原因の第4位を占め、60歳以上の高齢者の失明原因では第1位という病気だ>

加齢などによって目の黄斑部(網膜の中心部分)に異常が生じる病気を、加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)と呼ぶ。

日本人の視覚障害の原因の第4位を占め、60歳以上の高齢者の失明原因では第1位。近年、患者が増加している。

加齢黄斑変性(AMD)に代表される「網膜硝子体」の治療と予防の第一人者である聖隷浜松病院(静岡県)の眼科部長・尾花明氏は、光環境や食習慣が大きく変化している中で進行する高齢化時代に、生涯、視機能を保つためには意識的に眼の健康を気遣う必要があると言う。

中高年や加齢黄斑変性患者に向けて、加齢黄斑変性とはどのような疾患なのか、その最新治療や予防法について、自身の臨床経験や臨床研究成果を基に執筆したという尾花氏の新刊『「一生よく見える目」をつくる! 加齢黄斑変性 治療と予防 最新マニュアル』(CCCメディアハウス)より、3回にわたって抜粋する。

この記事は第3回。

※第1回はこちら:目は確実に老化する。白内障、緑内障、そして日本で近年増加中の「失明原因」とは?
※第2回はこちら:女性より男性が高リスク。目の寿命が尽きるAMDの一因「光環境の変化」とは?

◇ ◇ ◇

AMD(加齢黄斑変性)の原因はひとつではない

AMDは「多因子疾患」といって、複数の要因が重なって発症する病気です。将来の備えを考えるうえで、AMDの発症要因を知っておくことは非常に重要ですので、ひとつずつ見ていきましょう。

amdbook-3-20220207chart1.png

『「一生よく見える目」をつくる! 加齢黄斑変性 治療と予防 最新マニュアル』55ページより

●加齢によってカラダが錆びる

「老化」とは、成熟期を過ぎた細胞や組織がしだいに弱って、最終的に生物としての終末を迎える現象ですが、その機序(メカニズム)は非常に複雑です。そのひとつとして、細胞が生きるための代謝活動で使う酸素の一部が活性酸素(悪玉酸素)になり、これが細胞や組織を傷害(酸化)することがあげられます。

これは「酸化ストレス」と呼ばれるもので、「老化とは、活性酸素による酸化ストレスでカラダが錆びること」などとも言われます。この酸化ストレスがAMD発症に深くかかわっています。

●酸化ストレスが視細胞を傷つける

視細胞は光刺激を電気信号に変える際に非常に多くのエネルギーを必要とします。起きている間、絶え間なく働く視細胞は代謝が盛んで多量の酸素を必要とするのです。

そのため、網膜の酸素濃度はカラダのどの部分よりも高いと言われています。つまり、網膜はそれだけ活性酸素が発生しやすい状態にあるということなのです。

光を吸収する視色素も活性酸素の発生源になることが知られていますし、網膜色素上皮細胞の中に溜まっている老廃物リポフスチンも、強力な活性酸素の発生源になります。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米インフレ圧力、今年の最大リスク=ノルウェー政府系

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件増、継続受給は約3年

ワールド

米CNN、従業員の6%削減へ デジタル化推進の一環

ワールド

トルコ中銀、2.5%利下げ 主要金利45%に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 4
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 5
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 6
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 9
    【トランプ2.0】「少数の金持ちによる少数の金持ちの…
  • 10
    トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 7
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中