あなたはいくらエクササイズしても痩せない 脂肪燃焼は5%が限界、「運動したら痩せる」は科学的に大間違い
狩猟採集をしていた時代から運動量が減っているわけではない。1980年代と比べても運動量が減っているわけではない。それなのに肥満は驚異的なスピードで広まった。となると、運動量の低下が肥満を招く主な原因であるとは考えにくい。運動量の低下が、肥満がまん延するようになった原因でないならば、おそらく運動をしても肥満をなくすことはできないだろう。
運動して燃やせる脂肪は「5%」が限界
一日に使われるカロリー(出ていくカロリー)は、正確にいえば「総エネルギー消費量」という。総エネルギー消費量は、基礎代謝量(のちほど定義する)、食事による熱発生効果、非運動性熱産生、運動後過剰酸素消費量、そしてもちろん運動によるエネルギー消費量を足し合わせたものだ。
「総エネルギー消費量」=基礎代謝量+食事による熱発生効果+非運動性熱産生+運動後過剰酸素消費量+運動によるエネルギー消費量
ここで大切なポイントは、総エネルギー消費量に含まれるのは運動によるエネルギー消費量だけではない、という点だ。総エネルギー消費量の大部分を占めるのは運動ではなく基礎代謝量だ。これは、呼吸、体温の維持、心臓の拍動の維持、脳機能、肝臓機能、腎臓機能など、代謝によって体の機能を維持する働きだ。
例を挙げてみよう。軽い運動をしている平均的な男性の総エネルギー消費量は、一日あたり2500キロカロリーだ。これに対して、毎日、ゆっくりと(時速3キロ程度)45分間歩いた場合に燃やされるエネルギーは、およそ104キロカロリー。
言い換えれば、ウォーキングをしても総エネルギー消費量のわずか5%ほどしか消費しないということになる。カロリーのほとんど(95%)が基礎代謝に使われるということだ。
基礎代謝量は数多くの要因によって変わってくるが、その要因には次のようなものが含まれる。
・遺伝
・性別(基礎代謝量は、通常は男性のほうが高い)
・年齢(基礎代謝量は年齢とともに落ちていく)
・体重(基礎代謝量は筋肉量にともなって増えていく)
・身長(基礎代謝量は身長が高いほど高い)
・食事(過食か少食か)
・体温
・外気温(体が温められるか、冷やされるか)
・臓器の機能
そのほか、睡眠、食事、運動以外の活動によって消費されるエネルギーのことを「非運動性熱産生」という。たとえば、散歩、ガーデニング、料理、掃除、買い物などがそれにあたる。
また、食事による「熱発生効果」は、食べ物を消化・吸収するときに使われるエネルギーを指す(食べ物に含まれる脂質などは吸収されやすく、代謝に要するエネルギーは少ない。たんぱく質の合成のほうが難しく、より多くのエネルギーを要する、など)。