あなたはいくらエクササイズしても痩せない 脂肪燃焼は5%が限界、「運動したら痩せる」は科学的に大間違い
食事による熱発生効果は、食事量、食事回数、多量栄養素によって変わってくる。「運動後過剰酸素消費量」は、細胞の修復、燃料の補充、そのほか運動後の回復活動に使われるエネルギーだ。
前述したように、基礎代謝量を測るのはとても難しいため、「非運動性熱産生、食べ物による熱発生効果、運動後過剰酸素消費量は常に一定である」という、わかりやすいけれども間違った仮説を私たちは作り上げてしまった。
この間違った仮説のせいで、「私たちが変えることができるのは運動によるエネルギー消費量だけ」という重大な誤りを含んだ結論が導かれている。そして、消費カロリーを増やすには運動量を増やせばいい、といわれるようになってしまった。
だが、ひとつの大きな問題は、基礎代謝量は一定ではないということだ。摂取カロリーを減らすと、基礎代謝量は最大で40%も減少する。逆に、摂取カロリーを増やせば、基礎代謝量は50%も増える。
どうしても「食べた以上に動く」とやせそうに思える
これまで、「肥満の解消には食事療法と運動の両方が大切」だと、どちらも同じくらい重要であるかのようにいわれてきた。
だが、食事療法と運動は、どちらも同じくらい大切というわけではない。食事療法がバットマンだとすると、運動はさしずめロビン(バットマンの弟子という役どころの架空のスーパーヒーロー)といったところだろう。肥満の原因の95%を占めるのは食事なのだ。
だから、そこにすべての注意を向けなければならない。論理的に考えれば、食事に的を絞ったほうが効果が出やすいということになる。
もちろん、運動は健康のためにいいし、大切だ――ただ、同じように大切なわけではない。運動することによる利点もあるだろうが、体重を落とす効果は期待できない。
野球にたとえて考えてみよう。バントは大切なテクニックのひとつだが、おそらく試合の5%ほどを左右するに過ぎない。残りの95%は打撃、ピッチング、守備にかかっている。だとすると、練習時間の50%をバント練習にあてるのは馬鹿げているだろう。
あるいは、もしこれから受けるテストの95%が数学で、5%が単語の書き取りだったとしたら? 勉強時間の50%を単語練習にあてるだろうか?
「マラソン」でもごくわずかしか減らない
「運動をしても思ったほど体重は減らない」という事実は、これまでに行われた医学研究で十分に立証されている。
週間にわたって行われた研究では、実際に減った体重は予測の30%にとどまったことがわかっている(※8、9)。最近行われた実験では、被験者の運動を週5回に増やし、1回あたり600キロカロリーを消費させた。10カ月後、運動をした被験者たちの体重は4.5キロ減った(※10)。だが、減ると予測されていた体重は16キロだったのだ!
長期にわたって実施されたほかのランダム化比較試験の多くも、運動が減量に及ぼす影響は限定的か、あるいはまったくないことを示している(※11)。
2007年に行われたランダム化比較試験では、1年にわたって週6日、エアロビクスをやった被験者の体重は、女性の場合、平均で約1.4キロ減少、男性の場合は1.8キロの減少が見られただけだった(※12)。