最新記事

ダイエット

あなたはいくらエクササイズしても痩せない 脂肪燃焼は5%が限界、「運動したら痩せる」は科学的に大間違い

2021年11月23日(火)19時15分
ジェイソン・ファン(医学博士) *PRESIDENT Onlineからの転載

デンマークの研究グループは、座っていることの多かった人たちにマラソンをさせてみた(※13)。すると、男性は平均で2.3キロ、体重が減少した。だが、女性の体重の減少は......ゼロだった。

体重を減らすことに関しては、運動はそれほど効果的ではないのだ。これらの研究では、体脂肪率にも大きな変化は見られなかった。

最も野心的で、多くの費用をかけて行われた、食事療法に関する包括的な研究「Women's Health Study(女性の健康に関する研究)」でも、運動についての研究が行われた(※14)。3万9876人の女性が、運動をよくする(一日に1時間以上)グループ、適度にするグループ、ほとんどしないグループの3つに分けられた。

10年間にわたって観察が続けられたが、運動をよくするグループの女性に、体重の減少は見られなかった。さらに、研究結果には「身体組成に何ら変化は見られなかった」とある。つまり、脂肪が筋肉に変わったということもなかった、ということだ。

食欲が「思っている以上」に増大する

なぜ、実際に落ちた体重は予想よりはるかに少なかったのだろう? その犯人は「代償作用」という現象だ――これには主にふたつのメカニズムがある。

まず、運動をすると摂取カロリーが増える――激しい運動をしたあとは、いつもより多く食べてしまうものだ(体にとって必要だから"お腹がすく"のだ)。

ハーバード公衆衛生大学院の538人の学生を対象に行われたコホート研究(ある集団の生活習慣などを追跡調査して、疾患のリスクとその要因を明らかにする研究)では、「運動はエネルギーを消費する活動だと考えられているが、我々の研究結果はこの仮説を支持しない」とされた(※15)。運動の時間が1時間超過するたびに、学生らは292キロカロリー余分に食べたのだ。

体は安定した状態を保とうとする。だから、摂取カロリーが減れば、消費カロリーも減る。同様に消費カロリーが増えれば、摂取カロリーも増えるのだ。

代償作用のふたつめのメカニズムは、運動以外の活動によって、そのほかの時間の過ごし方が変わってくるというものだ。一日中頑張って働いたら、空いた時間に運動をしようとは思わないだろう。

ハッツァ族は一日中歩き回るため、休めるときには体を休めていた。これとは対照的に、一日を椅子に座って過ごすことの多いアメリカ人は、機会があれば体をなるべく動かそうとしている。

この原則は、子どもであっても同じだ。学校で体育の授業を受けている7歳から8歳の児童と、体育の授業を受けていない児童とを比較したところ(※16)、体育の授業を受けているグループは、平均して週に9.2時間、学校で運動していたのに対し、もう一方のグループは、学校ではいっさい運動をしていなかった。

だが、活動量計を使って身体活動を測定し、1週間の活動量の合計を比べたところ、ふたつのグループに差はなかった。なぜだろう?

体育の授業を受けていたグループは、その分、家ではあまり動かなかった。体育の授業を受けていなかったグループは、家に帰ってから、その分動いていた。結局、その差はなくなったというわけだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物は続落、供給過剰への懸念広がる

ビジネス

来年末のS&P500、現行水準から10%上昇へ=B

ビジネス

キオクシアHD株、ベインキャピタル系が一部売却 保

ビジネス

前場の日経平均は続伸、AI関連株などが押し上げ T
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 6
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中