「オレンジワイン」、8000年の時を経て密かなブームに
Orange Wine Is Taking Over
ジョージアには今でもクベブリを使っている醸造家が多くいる。カハ・チョティアシュビリは東部カヘティ地方で代々ワインを醸造してきた一族の跡取り。琥珀色のワインの伝統を守ろうと、共同経営のブドウ畑で最高50種の特産品種を育てている。
ブドウを破砕した後、皮だけでなく梗こうと呼ばれるブドウの柄の部分も一緒に漬け込む醸造家もいるが、チョティアシュビリは梗を除いて発酵させる。
そのまま6、7カ月寝かせて、オーク材の樽かステンレスのタンクに入れ替えて熟成させる。クベブリから直接ボトル詰めする場合もある。
ブドウ栽培でも醸造過程でも添加物や化学物質は一切使わない。人の手をほとんど加えないからなおさら、経験の浅い醸造家は微妙な調整に失敗しがちだが、ブドウ栽培とワイン造りに幼い頃から親しんできたチョティアシュビリならお手の物だ。
もっともオレンジワインはジョージアの専売特許ではない。イタリアやスロベニアでも白ブドウをスキンコンタクトで発酵させる伝統があり、いま人気のあるオレンジワインの素晴らしい銘柄が数多く生まれている。
経験が最高の教師になる
ワインに詳しいスロベニア人ライター、サショ・ドラビネッチは、ヨーロッパでオレンジワインが見直され、人気に火が付いて大喜びしている。スロベニア南西部の港湾都市コペルで育った彼は子供の頃、地元の農家がスキンコンタクトワインを造るのを見てきた。
地元では70年代までスキンコンタクトワインがよく飲まれていたが、その後白ワインの人気に押されて下火に......。伝統製法が復活したのは1年ほど前で、昔のものに比べてより安定した品質が可能になった。ドラビネッチは仲間と共にオレンジワインの試飲会を主催。それが発展してスロベニアで2012年にオレンジワイン祭りが開催され、同年秋にウィーンでも姉妹祭が開かれて、いずれも大盛況だった。
ブームに乗ってスペインや南アフリカ、さらにはカリフォルニアの醸造家もオレンジワイン造りに取り組み始めた。
発酵に天然酵母を使い、酸化防止剤の亜硫酸塩の使用も極力抑える自然派ワインは90年代にフランスで生まれ、人気を呼んでいるが、オレンジワインもその仲間だ。「小規模の手作り製法で、醸造家によって特徴的な味わいがあり、醸造家と愛好家の交流が盛んだ」と、ドラビネッチは言う。