性描写もお涙頂戴もない「どんでん返し製造機」、現役医師ベストセラー作家のサスペンスは面白いのか
The Twist Machine
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フリーダ・マクファデンは脳障害の専門医の仕事を続ける傍らサスペンススリラーのジャンルでも活躍、次々とベストセラーを世に送り出してきた PHOTO ILLUSTRATON BY SLATE. IMAGES VIA FREIDAMCFADDEN.COM AND ©MIRA WHITING.ーSLATE
<『ハウスメイド』などで知られる米人気作家、フリーダ・マクファデン。ベストセラーを連発するが、ワンパターンが命取りになりかねない。読者はどう読んでいる?【レビュー】>
フリーダ・マクファデン(Freida McFadden)のスリラーの世界には一見「完璧」な人々と暮らしがあふれている。裕福で「ものすごくハンサム」な夫たち、身ぎれいで「非常に美しい」妻たち、巨大なペントハウスやマンション。それに革張りのソファ、しかもたくさんのソファだ!
マクファデンの代表作である『ハウスメイド(The Housemaid)』(※リンクをクリックするとアマゾンに飛びます)は、最初の語り手が誰だか分からない。彼女はおぞましい光景が待ち受けている上の階に向かった刑事が、彼女が腰掛けている「焦げたキャラメルのような色のイタリアンレザー」の高級ソファに目を留めただろうかと考える。
マクファデン通なら分かるとおり、本作もほとんどはヒロインが語り手だが、この最初の語り手は十中八九別の人物だ。ボストン在住の現役医師がマクファデンというペンネームで執筆したスリラー小説はこれまでに23作品、販売部数は合計600万部を超える。最初は2013年にアマゾンで自費出版、現在は独立系出版社ソースブックスなどとの従来型出版でベストセラーを量産している。
読者の興味を引くため、マクファデンのスリラーは大抵、虐殺の現場で幕を開ける。死体、逮捕、闇の中で語り手に忍び寄る殺人者。それから物語の冒頭、事件の数日か数週間か数カ月前に戻って、ごく普通の人々(メイド、高校講師、看護師)か、一見「完璧な」人々の身に起きた経緯を解き明かす。
いずれの場合も、ヒロイン自身も大きな秘密を抱えていて、何章にもわたってほのめかした末に、最後にはうっかり漏らしてしまう。