イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レディパーツ！』が描く新しいムスリム女性像

ノーベル平和賞を受賞しているパキスタン出身の人権活動家マララ・ユスフザイ氏もゲスト出演している『絶叫パンクス　レディパーツ！シーズン２』© WTTV Ltd 2024.

なぜ『レディパーツ』は支持されるのか

本作はイギリスのマイノリティを主役にすえた社会派コメディだが、シーズン1は「マジョリティ」の視聴者からも多くの支持を得たという。最後に本作の魅力について私見を述べたい。

ムスリム女性だけのパンクバンドという奇抜な設定が注目された可能性は高い。それに、「パンク」や「フェミニズム」のメッセージが込められたことの影響も大きいだろう。この二つはどちらも、公正な社会や世界を目指す、草の根からの連帯運動として、より広い層を取り込みうるからである。

シーズン2には、アイーシャのパートナーとして「白人」（おそらくキリスト教家庭出身）の女性ローラが登場する。彼女との関係を続けるために、アイーシャは両親に自分がクイア（性的マイノリティや、既存の性のカテゴリに当てはまらない人々の総称）であることを告げようかと思い悩む。

同じ頃、アミーナやその親友ノールは、自身がなした婚前の性的関係について後悔の念に苛まれる。ビズマはヒジャブを取るか取らないかをめぐって夫と衝突する。サイラは彼氏や家族との関係を修復しようと動き出し、レディパーツから離れたモンタズは自分らしい新たな道を切り拓こうとする。

規範を破り、「自由」に生きることは決して簡単ではない。尖がりながら、必死に、不器用にもがくかれらの、実に人間らしい描写こそが、信条も性別も住む場所も違う人々をも惹きつける、本作最大の魅力ではないだろうか。

社会派コメディ『絶叫パンクス レディパーツ！』は、イスラム教やパンク、フェミニズムの現在を知ったり、日常生活の中の規範や自由について考えたりするための、親しみやすい入口を提供してくれる。そして何よりも、とにかく面白い！！　この春、必見の海外ドラマだということは間違いない。

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【作品概要】
作品名：海外ドラマ『絶叫パンクス レディパーツ！』シーズン2
内容：ロンドンを舞台に、ムスリム女性のパンクバンド「レディパーツ」が繰り広げる青春音楽コメディ。現代のムスリム女性の悩みや思いをパンクに乗せて歌い上げ、英国アカデミー賞（BAFTA）をはじめ数々の賞に輝いた大ヒット作の続編。
作品URL：『絶叫パンクス レディパーツ！』公式ページ

放送予定　スターチャンネル
＜字幕版・吹替版＞2025年3月にはBS10スターチャンネルで独占日本初放送予定）※BS10にて第1話先行無料放送予定

配信　スターチャンネルEX
＜字幕版・吹替版＞全話一挙独占配信中

【本予告】海外ドラマ『絶叫パンクス レディパーツ！ シーズン２』スターチャンネルEXにて独占日本初配信中！

●執筆：後藤絵美

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教。

東京外国語大学外国語学部西南アジア課程ペルシア語学科を卒業後、東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻を修了。博士（学術）（東京大学）2011年。

現代のイスラムの理解や実践を支える構造について研究している。主な著書に、『神のためにまとうヴェール──現代エジプトの女性とイスラーム』（中央公論新社、2014年）、『イスラームのおしえ（イスラームってなに？）』（かもがわ出版、2017年）、『記憶と記録にみる女性たちと百年（イスラーム・ジェンダー・スタディーズ5）』（明石書店, 共編著者, 2023年）などがある。