ラスト15分で「家族ドラマから芸術の域に」...ワケあり3姉妹の再会を描く、映画『喪う』は傑作
A Story of Three Daughters
長い間、感情面でも物理的にも父親の一番近くにいたのはレイチェルだ。父親が元気な頃からアパートで同居していた彼女は定職には就かず、スポーツ賭博で日銭を稼いでいる。
コーディリアたちの葛藤
映画の冒頭で父親は食事を取らなくなり、ほとんど意識不明で寝たきりの状態に。日中は看護師とホスピスのスタッフが訪問介護に来るので、姉妹は父親の寝室の隣の部屋に待機して時折様子をのぞくだけだ。
昼も夜もあり余る時間に、姉妹は食事の支度や後片付けから、レイチェルのお気楽さについてや訃報広告にケイティが何を書くかまで、ありとあらゆることでぶつかる。
何より、姉妹は互いの欠点をめぐってくすぶらせてきた不満をぶつけ合う。
ケイティの長女ぶった態度はほかの2人に姉妹というより従業員になったかのような気分を味わわせ、クリスティーナの落ち着きは独り善がりの完璧主義と映り、血のつながりのないレイチェルは老いた父親と同居してきたのに常に姉妹の中で疎外感を感じてきた。
いずれの嘆きももっともだが、こうした話題に触れるだけで誰かが泣くか、怒って部屋を飛び出していく。リア王の娘たちに例えるとしたら欲深いリーガンやゴネリルはいない。いわば3人ともコーディリアで、愛する父親を守り、父親が最期に必要とするケアができるのは自分だと確信している。