ラスト15分で「家族ドラマから芸術の域に」...ワケあり3姉妹の再会を描く、映画『喪う』は傑作
A Story of Three Daughters
ほとんどワンシチュエーションの会話劇なので、舞台の収録のような印象になりがちだ。姉妹同士やホスピスのケアワーカーとのやりとりを通して3人それぞれの背景が浮かび上がる前半の1時間には、かなり芝居がかった部分もある。
それでもサム・レビの巧みなカメラワークはアパートという限られた空間に感情的な地図を浮かび上がらせる。立ち入り禁止区域があり(悲しみに打ちひしがれたレイチェルはヴィンセントの寝室に足を踏み入れることができない)、紛争地帯があり(キッチンとダイニングはしばしばケイティに乗っ取られる)、訪問者が心をざわつかせる。
レイチェルのボーイフレンドは、彼を侵入者扱いするケイティを歯に衣着せず批判する。この数年は、たぶんケイティより自分のほうがここで家族の食卓を囲んでいる、と。
ダイナマイトの箱さながらに人種的、性的、階級的な含みが詰まったハラハラするやりとりだが、ジェイコブスの脚本はそうした緊張を放置する。誰が正しいかよりも、悪気などないのに自分が正しいとかたくなに信じて目の前の人の言葉に耳を貸さないことのほうに関心を向けるからだ。
思いがけない「贈り物」
末期の父親にやがて死が訪れるように映画も必ずラストを迎える。