バーに来たらスマホをしまい「人と人とが交じり合う真っ白なキャンバス」を楽しもう
Stop Ruining Bar Culture!
「サービス業に従事する私たちはアプリではない」とコノリーは訴える KC CONNOLLY
<店内を見渡して、素敵な人があなたを見ていないかチェックしよう。そんな人がいたら1杯おごるといい。大丈夫、まだみんな、そういうのが好きだ>
ニューヨークのサービス業界で働いて11年になる。この間、大きな変化があった。
アイルランドで生まれ育った私がニューヨークで初めて働いた店は、モリー・ピッチャーズ・エール・ハウス。人気のアイリッシュパブだったが、今はもうない。
この店で働き始めて1カ月が過ぎた頃、私は店の隅っこの席が80代の常連客ロージーのものであることに気付いた。彼女は店に入ってくると、威圧的な態度でその席は自分のものだと主張する。先にそこに座っていた人たちは即座に譲る。問答無用。しかし今日、こうした不文律が尊重されることはないだろう。
ノスタルジーは「誘惑上手な嘘つき」といわれる。しかし数千人の客を相手にしてきた私は、現在のバーやパブは昔と違うと断言できる。ニューヨークのサービス業労働者を代表して、ここで宣言したい。バーという聖なる空間を汚したのは、あなたたち客だ。
変化のきっかけは、コロナ禍で飲食店に課せられた規制だった。サービス業に「ルール」が持ち込まれて以降、全てが客のために行われるようになった。
でも、サービス業に従事する私たちはアプリではない。ボタンを押せば自動的に何かをするロボットではない。私たちは人間であり、そのように扱われることを希望する。
テクノロジーが進歩すれば、人間も変わる。だが人間同士の自然発生的な会話が面白いバーのような場所に、進歩は本当に必要なのか。こんなことを書くのは、一方的で非人間的なやりとりがバーでも聞かれるからだ。
「携帯の充電してくれる?」
「Wi-Fiのパスワードを教えて」
「会計を19人で割ってくれる?」
「これ、作れる?」(携帯電話でピンク色のドリンクの写真を見せながら)
「マルガリータ、もらえる? 甘すぎず、辛すぎずで」(むちゃくちゃな注文だな)
相手への基本的な敬意を
研究によると、携帯電話に付着している細菌は便座の10倍だという。あなたがトイレでジムで、地下鉄の中で使っていた携帯電話が、充電を求めてバーテンダーの顔の前に無作法に突き出される。断れば、恨みはチップに跳ね返る。