最新記事
映画

「映画よ、もっと気候変動を語れ」 ディカプリオ主演作や『マッドマックス』の功績とは?

Climate Reality in Cinema

2024年6月21日(金)15時03分
ジェフ・ヤング(本誌環境担当記者)

スピーチをするアナ・ジェーン・ジョイナー

ジョイナーはハリウッド映画における気候変動問題の存在感を高める活動に取り組む MICHAEL KOVAC/GETTY IMAGES FOR GOOD ENERGY

しかし、気候変動対策を推進するためには、映画を通じて世論の関心を高めることが不可欠だと、ジョイナーは指摘する。「歴史を振り返っても、ストーリーテラーとアーティストが参加せずに成功した社会運動はない」

ジョイナーによれば、気候変動が登場する映画にはさまざまなタイプがある。

比較的多いのは、スーパーヒーローが活躍する大規模予算のアクション映画だ。ディストピア的未来や、ヒーローが阻止しようとする陰謀の一部として気候変動が描かれる。

『アクアマン』『ファンタスティック・フォー』『ジャスティス・リーグ』『アメイジング・スパイダーマン2』などがそうだ。

一方、気候変動が作品のプロットを大きく左右することこそないが、登場人物の会話に出てくる作品もある。

「このタイプの作品も心理面での重要性が大きい。気候変動を話題にするのは当たり前で、気候変動を恐れる感情を抱いてもいいのだと感じてもらえる」と、ジョイナーは言う。19年のロマンチックコメディー『マリッジ・ストーリー』はこのタイプだ。

さらに、「気候の世界」をつくり上げる映画もある。ジョイナーによれば、「ストーリー全体に気候変動問題が織り込まれていて、登場人物の人生とストーリー展開にも影響を及ぼす」タイプである。22年の映画『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』はその一例だ。

明るい兆しも見え始めた

気候現実テストに合格した映画はわずかにとどまったが、明るい兆しもある。

かつて何千作ものテレビドラマと映画を調べた際には、気候変動を取り上げた映画は3%に満たなかった。それに、今回の調査対象期間のうち、後半の5年間の「合格作」の数は、前半の5年間の2倍に達している。

ジョイナーによれば、興行収入面でも注目すべき点がある。気候現実テストの少なくとも一部の基準を満たす作品は、そうではない作品と比べて興行収入が10%高いという。

気候変動を織り込めばヒット確実だと主張しているわけではない。それでも、「気候変動もの」は観客に敬遠されると懸念する必要はないと、ジョイナーは話す。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中