最新記事
小澤征爾

独占インタビュー:師弟関係にあった佐渡裕が語る、「小澤先生が教えてくれたこと」

A Tribute to My Maestro

2024年3月2日(土)11時48分
佐渡 裕(指揮者)

新日本フィルで、私はベートーベンの第九を任されてサントリーホールで練習していました。最後の本番前のリハーサルで、オーケストラがやけに緊張していて、どうもムードが違う。途中で、客席にいる誰かに合唱とオーケストラの音のバランスを聞こうと思って、指揮をしながら振り返って「バランスどおぉー?」って叫んだら、「オッケーです!」と大声で返事をしてくれた人がいた。なんとそれは、手で大きく丸を作った小澤先生だったんです。

こうした逸話は、先生に関わった人は誰もが持っていると思います。

小澤先生がウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任されたのは2002年、67歳のときのことです。決して先生が得意とはいえなかったオペラという分野です。しかも先生はドイツ語はすごく苦手だったはず。政治力が渦巻く歌劇場で、オーケストラだけで200人、合唱団や熟練のスタッフや歌手や演出家と舞台をつくっていくのは、いくら小澤先生でも覚悟のいることだったでしょう。最後まで挑戦を忘れなかった小澤先生には、敬服の思いしかありません。

私は昨年4月、小澤先生が約50年前に創設した新日本フィルの音楽監督に就任しました。小学生のときから憧れていた小澤先生のオーケストラを引き継ぐ──これも運命だと思っています。(構成・本誌編集部)

◇ ◇ ◇

佐渡 裕(指揮者)

京都市立芸術大学卒業。1987年、米タングルウッド音楽祭に参加。その後、故レナード・バーンスタイン、小澤征爾らに師事。1989年、新進指揮者の登竜門として権威あるブザンソン国際指揮者コンクールで優勝。2015年よりオーストリアで110年以上の歴史を持つウィーンのトーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督を務め、2023年4月より新日本フィルハーモニー交響楽団第5代音楽監督に就任。テレビ番組『題名のない音楽会』の司会を2008年から7年半務めた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イランの港で大規模爆発、40人死亡・1200人負傷

ビジネス

中国工業部門利益、第1四半期は前年比+0.8% 増

ワールド

韓国大統領選、最大野党候補に李在明氏

ワールド

北朝鮮、ロシア派兵初めて認める 金氏「正義のために
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドローン攻撃」、逃げ惑う従業員たち...映像公開
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 8
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中