「真のモンスター」は殺人AI人形ではなかった...ホラー映画『M3GAN/ミーガン』が見せたものとは?
Who's the Real Monster?
子供にとっては親友、親にとっては協力者になるようプログラムされたミーガン(左)はケイディ(右)を守るために邪魔者を血祭りに上げる UNIVERSAL PICTURESーSLATE
<子供を守る使命を帯びたおもちゃが惨劇を起こす、人間の罪。そして知識と知恵の違いについて...>
アメリカで育った人なら、『M3GAN/ミーガン』のオープニングを見て、子供時代の土曜日の朝を思い出すに違いない。
土曜の朝の子供向けアニメ番組には、おもちゃのCMが付き物だった。メーカーはどんな製品であれ、いつまでも楽しく遊べますと宣伝する。 続いて描かれる失望感も、きっと覚えているだろう。
スクリーンに映し出されるのは「パーペチュアル・ペット(永遠のペット)」という、ぬいぐるみのCM。コンピューター制御だから犬や猫と違って死なず、充電すれば一生でも遊べるという触れ込みだ。
だが8歳の少女ケイディ(バイオレット・マッグロウ)が車の後部座席で遊んでいるパーペチュアル・ペットは、おやつをねだり、おならみたいな音を立てるだけでパッとしない。外は猛吹雪で、前の席では両親が運転に苦戦しながら口げんかをしている。
『ミーガン』はテクノロジーの暴走がテーマ。人間の機能を肩代わりするという触れ込みの技術はとかく失敗か期待外れに終わることを、冒頭で強調してみせる。
今や私たちはおすすめの本や映画を、その道に通じた店員や評論家や友人ではなく、アルゴリズムに聞く。
もっとも、車を買ったばかりの人に新車を売り込んだりするくらいだから、アルゴリズムの性能は高が知れている。私たちは人間顔負けの文章を書く対話型AI(人工知能)の登場に驚いているが、その実際の知能は虚言癖のある凡庸な高校生のレベルだろう。
子役のエイミー・ドナルドが演じ、ジェナ・デービスが声を担当したAI人形のミーガンは、生身の大人にさえ困難な使命を与えられる。それは、心に深い傷を負った子供のサポートだ。
車の中で両親は、ケイディにiPadをしまいなさいと命じる。その後、娘のiPadの使い方をめぐって言い争ううちに車がトラックと衝突し、2人とも死んでしまう。
残されたケイディはおばのジェマ(アリソン・ウィリアムズ)に引き取られる。玩具メーカーで研究開発を担当するジェマだが、子供との接し方はまるで分かっていない。
ジェマはパーペチュアル・ペットに続く新製品の開発という試練と姪の世話をまとめて解決するため、一計を案じる。子供にとって最高の友達になるようにプログラムされた等身大のAI人形ミーガンに、「あらゆるつらい出来事からケイディを守りなさい」と指示するのだ。