ゲイの男性と実親を知らない青年が「父と息子」に...映画『二十歳の息子』が見せる「普通」とは違う家族の形
An Offbeat Father and Son Story
そういう意味で、今回は監督の作品の中でも一番ダルデンヌっぽいと思う。ドキュメンタリーならなおさら、誰かの人生が途中から始まって、途中で終わるほうが説得力がある。説明がされず、よく分からないのも当たり前。島田監督なら、見ている人が「分かったような気になる」映画は撮らないと分かっていた。
――では、作品のメッセージ性についてはあまり考えていない?
僕は全然考えていない。監督がこの映画を通して何か言いたいことがあるのなら、それはきちんと伝えてね、と思う。ただ、「社会で子供を育てる」ということに興味を持つ人が増えてくれれば、それは嬉しい。
――最近は日本でも多様性ということがよく言われ、同性愛者をめぐる状況も少しずつよくなっていると思うが実感はあるか。
そう思いますけどね。ただ難しいんですが、そうだと思っている当事者がいても、非当事者から「変わってきていますよね」と言われると、素直に受け止められないっていうのがあります。
――同性婚が認められることが大きな分岐点になると思うが。
そうですね。でも選択的夫婦別姓さえ実現しないなら、同性婚は無理ではないか。ステップとしては、まず選択的夫婦別姓が通って、その後に同性婚だと思う。女性の権利や権限が男性と同じぐらいにならないと、数からいって、さらなるマイノリティーの話には行けないと思っている。
――映画の中にも出てくるが、2006年の本誌の同性愛特集で表紙に登場してくれた。
友達の石川大我(現・参議院議員)から紹介されて表紙にも出たのですが、振り返れば振り返るほど、自分にとっては大きな転機だったと感じる。周囲からの反響がすごくて、ふだん連絡を取っていない同級生からも「見たよ」とメールが来たりして、カミングアウトの手間がはぶけたんです。そこで腹がすわって、もっと自由になれた。ネットで名前を調べたら分かることだから、自分からゲイだとさっさと言えるようになったんです。