最新記事

映画

ゲイの男性と実親を知らない青年が「父と息子」に...映画『二十歳の息子』が見せる「普通」とは違う家族の形

An Offbeat Father and Son Story

2023年2月10日(金)14時00分
大橋希(本誌記者)

230214p53_hmo01.jpg

網谷 渉 1998年生まれ。0歳で養護施設に預けられる。両親の記憶は一切ない。幼少期は施設や里親に預けられるが、里親からの虐待、施設でのいじめなどを経験する。2018年、網谷勇気と養子縁組を行い、正式に家族となる。 ©JYAJYA FILMS

そういう意味で、今回は監督の作品の中でも一番ダルデンヌっぽいと思う。ドキュメンタリーならなおさら、誰かの人生が途中から始まって、途中で終わるほうが説得力がある。説明がされず、よく分からないのも当たり前。島田監督なら、見ている人が「分かったような気になる」映画は撮らないと分かっていた。

――では、作品のメッセージ性についてはあまり考えていない?

僕は全然考えていない。監督がこの映画を通して何か言いたいことがあるのなら、それはきちんと伝えてね、と思う。ただ、「社会で子供を育てる」ということに興味を持つ人が増えてくれれば、それは嬉しい。

――最近は日本でも多様性ということがよく言われ、同性愛者をめぐる状況も少しずつよくなっていると思うが実感はあるか。

そう思いますけどね。ただ難しいんですが、そうだと思っている当事者がいても、非当事者から「変わってきていますよね」と言われると、素直に受け止められないっていうのがあります。

――同性婚が認められることが大きな分岐点になると思うが。

そうですね。でも選択的夫婦別姓さえ実現しないなら、同性婚は無理ではないか。ステップとしては、まず選択的夫婦別姓が通って、その後に同性婚だと思う。女性の権利や権限が男性と同じぐらいにならないと、数からいって、さらなるマイノリティーの話には行けないと思っている。

――映画の中にも出てくるが、2006年の本誌の同性愛特集で表紙に登場してくれた。

友達の石川大我(現・参議院議員)から紹介されて表紙にも出たのですが、振り返れば振り返るほど、自分にとっては大きな転機だったと感じる。周囲からの反響がすごくて、ふだん連絡を取っていない同級生からも「見たよ」とメールが来たりして、カミングアウトの手間がはぶけたんです。そこで腹がすわって、もっと自由になれた。ネットで名前を調べたら分かることだから、自分からゲイだとさっさと言えるようになったんです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄、山陽特殊製鋼を完全子会社に 1株2750

ワールド

ノルウェーで欧州懐疑派政党が政権離脱、閣僚の半数近

ビジネス

日経平均は小幅に3日続伸、方向感欠く 個別物色は活

ビジネス

午後3時のドルは154円台を上下、トランプ関税や日
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中