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最底辺「地下アイドル」が見た厳しい現実 松山あおいが下剋上を成功させた秘訣とは

2022年11月20日(日)11時00分
松原大輔(編集者・ライター) *東洋経済オンラインからの転載

「あるとき、テレビ局の放送枠をスポンサードできることを知ったんです。それで1回でもテレビでアニメを流して自分の曲を流せばアニソンシンガーじゃん!って」

クラウドファンディングで400万円超の支援を集める

はっきり言えば、子どもでも思いつきそうな発想だ。だが現実的には、日々の生活のためアルバイトをしながら活動するフリーのソロアイドルが実現するには非現実的な話である。

「もちろんそんな広告費にかけられる大金はないので、クラウドファンディングを使ったところ、ファンの方が思った以上に応援してくださったんです」

2021年に行った、松山あおいオリジナルアニメプロジェクトのクラウドファンディングでは、なんと400万円を超える支援が集まった。

「アニソンシンガーになりたい!」という想いで自らアニメを作って曲を流す。ここまでは思いつくアイドルもいるだろう。

だが、それを実行し、400万円もの支援を集めてしまったこの行動力は、ほかに例がないだろう。しかも、ひとりでだ。できそうでできないことを平然とやってのけるのが、松山の強みである。

『限界アニメ松山あおい物語』

テレビ埼玉で放送された『限界アニメ松山あおい物語』。クラウドファンディングの成功もあり今年で第4シーズンを迎える(写真:松山あおいさん提供)

また、クラウドファンディングの成功は、それまでにストリートや店頭で積み上げ、築き上げてきたファンとの関係性が強固であることを物語る。

松山がファンとの時間を大事にするために続けたもの、それは配信アプリ「SHOWROOM」によるライブ配信だった。

毎日配信を最長で「1600日以上」続けたこともあるという。4年以上毎日、ライブ配信を続けた。その「継続できる力」も、もはや彼女の魅力のひとつなのだろう。

無いものは作る、作るためには続ける。チャレンジし続ける。そんな松山あおいの「クリエイティブ継続力」こそが、「最底辺"地下アイドル"」から大下剋上を成功させた秘訣なのである。

松原大輔

編集者・ライター
富山県出身。編集者・ライター・YouTubeプロデューサー。中央大学法学部卒。在学中より故・永谷修氏に師事。大学卒業後、講談社生活文化局にて編集見習いとなる。その後、文藝春秋『Sports Graphic Number』編集部などで編集者・記者を経て、2018年に独立。パインプレーリー(同)を設立。書籍の企画、編集や執筆活動、YouTubeの動画制作・プロデュース、アーティストマネジメントなどを行っている。


※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
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「自ら作り、継続する」大切さを教えてくれるアイドルの松山あおいさん

 
悔しくて泣く夜もあったストリートライブ (写真:松山あおいさん提供) 何度もチャレンジし、遂に勝利を収めたTIF予選 (写真:松山あおいさん提供) 何度もチャレンジし、遂に勝利を収めたTIF予選 (写真:松山あおいさん提供) 常に楽しいライブを心がけている (写真:松山あおいさん提供) 『松山あおい物語』の記念コンサートより (写真:松山あおいさん提供) 初めてのグッズTシャツは1枚1枚手摺りで作った (写真:松山あおいさん提供) 「松山あおいのヲタクは限界」と「限界」が合言葉に (撮影:カネコシュウイチ) インタビュー時の松山あおいさん  (撮影:カネコシュウイチ) インタビュー時の松山あおいさん (撮影:松原大輔) インタビュー時の松山あおいさん (撮影:松原大輔)
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