最新記事

アート

『イカゲーム』のイ・ジョンジェにGOT7のジニョン、韓国トップスターが出演するアート

2022年9月3日(土)15時45分
井手ゆい

220903ohs_kmm06.jpg

『どこにもない場所のこと:フリーダム・ヴィレッジ』の未来世界の男(ジニョン) 『どこにもない場所のこと:フリーダム・ヴィレッジ』(2021年)2チャンネル・ヴィデオ・インスタレーション14分35秒 installation view at National Museum of Modern and Contemporary Art, Korea, For the project

220903ohs_kmm07.jpg

『どこにもない場所のこと:フリーダム・ヴィレッジ』の一場面。未来世界を映すパネルと背中合わせのもう一方のパネルで「自由の村」の住人(パク・ジョンミン)の物語が進む。

俳優の起用に関する具体的な言及を見つけられていないが、ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホのキャスティングの条件は、協働者としてアイデアを共有できる役者であることで、結果的にこれまで協働した俳優は良い演技をする良い役者だった、と『美術手帖』の取材で答えている。パク・ジョンミンは、映画『それだけが、僕の世界』(18年)でサバン症候群の青年を、映画『ただ悪より救いたまえ』(20年)でドラァグクイーンを演じ、ファン・ジョンミンやイ・ジョンジェら共演したベテラン勢から絶賛されている。ジニョンはボーイズグループGOT7のメンバーとして多くのファンをもつが、俳優としても頭角を現し、『ユミの細胞たち1・2』(21年、22年)では繊細な表情の演技が視聴者をくぎ付けにした。『どこにもない場所のこと:フリーダム・ヴィレッジ』のメッセージが明快に響いてくるのは、彼らの力があってこそ、と言っていい。

初公開の『どこにもない場所のこと:エクリプス』(22年)は、仮想現実の大海原で1人、救命ボートで必死に生きる男を描く。演じるのは、大ブームとなったドラマ『恋のスケッチ〜応答せよ1988〜』(15年)で一躍有名になったリュ・ジュンヨル。映画『タクシー運転手』(17年)でのバイプレイヤーとしての活躍や、その後の主演作もヒットが続き、いまや韓国映画に欠かせぬ存在感を放つ。本作でもその演技力は圧巻で、大型LEDパネルの画面いっぱいに映し出される顔からは、叫んだりわめいたりすることなく、孤独な男の希望と絶望とがにじみ出ていて、会場でも人々を大いに引き付けていた。

220903ohs_kmm08.jpg

『どこにもない場所のこと:エクリプス』(22年)の展示風景。大海原でひとり生きる男をリュ・ジュンヨルが演じる。

リュ・ジュンヨルは8月30日からソウルのアート・ソンジェ・センターで公開が始まったムン・キョンウォン&チョン・ジュンホの新作『Seoul Weather Station』にも出演している。2人のアーティストと気鋭の俳優とがどのように取り組んだのか、気になるところだ。

金沢21世紀美術館の展覧会『ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ どこにもない場所のこと』は、9月4日で終了。9月末頃に刊行が予定されているという図録が期待される。

●『ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ どこにもない場所のこと』展は9月4日(日)まで、金沢21世紀美術館にて開催。https://www.kanazawa21.jp/

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中